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目覚めたら女の身体になっていて…秘密結社が舞台の「お仕事漫画」誕生秘話を聞く

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 サラリーマンであれば、誰でも予算や納期、上司や仕様変更に振り回された経験はあるはずです。フレックスコミックスが運営する日本の無料ウェブコミック配信サイトで連載中の「怪人開発部の黒井津さん」は、悪の組織アガスティアの怪人開発部に所属する研究助手の黒井津燈香(くろいつ とうか)が主人公

職場 失敗

※画像はイメージです

 だが、彼女が目下戦わなければいけない敵は、正義のヒーローではなかった。わずか10分ででっちあげた企画書だけを武器に怪人開発企画会議に臨み、並み居る幹部たちを納得させるプレゼンをこなさなければならないのだ。黒井津さんは無事、プレゼンをこなすことができるのか――!?

 今回はアニメ化もされた『怪人開発部の黒井津さん (1)』(メテオCOMICS)作者の水崎弘明先生@s_hanabi)にインタビュー。凶暴な怪人が目覚めたら女の身体になっていて…など衝撃的な作品誕生のきっかけや仕事へのイメージを聞きました。

【後半インタビュー】⇒<漫画>目覚めたら女の身体になっていて…秘密結社が舞台の「お仕事漫画」誕生秘話を聞く

【マンガ】⇒怪人開発部の黒井津さんを読む

お仕事と、ヒロインものの要素の組み合わせ

――「怪人開発部」というアイデアの発端について教えてください。

水崎弘明(以下、水崎):アイデアのきっかけは単純なものです。もともと自分は、やや浮世離れした存在の、所帯じみた日常の漫画を描くのが好きだったんです。そういった「やや浮き世離れした存在」の中で、多くの人にある程度イメージが共有されているものが何かと考えたときに「悪の組織」が思い浮かびました。

 とはいえ「悪の組織」を扱った作品にはとても偉大な先輩もいらっしゃいます。そういった先輩方となんとか差別化しようと四苦八苦しているとき、組織を運営するために必要なお仕事の要素と、ヒロインものの要素を組み合わせてみようと思い至りました。結果生まれたのが「怪人開発部」という世界観の基礎部分だと思います。

――怪人をテーマにした作品を描きたいと思ったのはなぜですか?

水崎:もともと「怪人」という特撮の敵キャラや、言葉の響き自体が好きだったということがあるのですが、一番大きいのは、漫画にした時にいろいろなバリエーションのキャラを作れそうだと思ったからですね。漫画はやっぱりキャラクターがあってこそなのですが「怪人」は、もうかれこれ50年以上新たな存在が生み出され続けているわけですから、そのバリエーションは申し分ないということかもしれません。

悪の組織よりブラックな仕事がある

怪人開発部の黒井津さん

『怪人開発部の黒井津さん』(メテオCOMICS)

――仕事をテーマにした作品を描きたいと思ったのはなぜですか?

水崎:大きいのは、読者の方々にも共感できるところがあるのではないかと思ったからです。まだ働いていない学生さんのような例外もあるかもしれませんが、だったとしても身近に働いている人はいると思いますし、いつか自分が働くかもしれないという風に見ることができますよね。

 また最初の質問の答えと少し被りますが、「怪人」というテーマに非日常性があるので、ある意味正反対の日常的な「仕事」という要素をぶつけると面白くなるのではないかという思いもありました。

――仕事についてどのようなイメージを持っていますか?

水崎:ずっと漫画を描いて生計を立てたいという希望を持っていたので、若い頃、漫画以外の仕事をしているときはかなり焦りがありました。なので仕事と言われると、個人的には焦燥感のイメージが強いです。が、それはちょっと特殊かもしれません。

 元会社勤めの作家さんと話をすると、仕事においてはやはり人間関係が一番大変だったという話をよく聞きます。自分もそうでしたが、仕事そのものが自分に合っていたとしても、仕事上で付き合う人物と合わないと厳しいと。これは漫画家であっても同様なのかなと思います。なので仕事で大事なのは人、そういうイメージを持っています。

――実際に作品を描く前と後で仕事に対するイメージに変化はありましたか?

水崎:連載が始まって驚いたのは、作品の感想に「うちの会社は~で~」というようなブラックな体験談を送ってくれる方々がとにかく多かったことでした。世の中には悪の組織よりブラックな仕事をやっているのではないか? という人がいるということは、よりリアルに感じられました。

<取材・文/シルバー井荻>

怪人開発部の黒井津さん (1)

怪人開発部の黒井津さん (1)

これは、予算や納期、上司や仕様変更に振り回される、すべての働く人たちに捧げる物語

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