コロナ禍でパッケージデザインに“定番返り”が。AIが変える「商品開発の最前線」とは
「ブラックボックス化しませんか」と心配された時期も
とはいえ、2019年にこのAIサービスを始めた当初は、AIの実態をなかなか理解してもらえず、「本当に信頼に足るものなのか、AIだとブラックボックス化してしまうのでは」という心配の声も上がったという。
「以前は、実際の調査結果と比較されることもありました。でも、調査方法や状況によって、評価は変わるものです。調査結果と合わないからと、切り捨ててしまうのは非常にもったいないことだと思います。『1000万人の学習データと長年のノウハウを学習させたAIを使えば、10秒で客観的な結果が出る』という事実に対して、その仕組みを理解し、使い方を工夫するのがベストではないでしょうか。
実際に、仕組みを理解してもらうことで、最近はご活用いただけるようになりました。現実として、世の中のDX化は確実に進んでいきます。新しい技術に対する心理的なバリアや、仕事の進めかたを変えることへの抵抗感をいかに早く取り払い、AIの仕組みを理解して、取り入れかたや使い方をどう工夫するかといった発想の転換を提案していきたいです」
コロナ禍でデザインに「定番返り」
同社のAIに使われているという1000万人もの学習データはどのように集められ、またアルゴリズムはどのように作られたものなのだろうか。
「消費者データは6か月に1回程度、大規模な調査を行って更新しています。具体的には、新商品のデザインを消費者モニターに見せ、web上で評価を行ってもらい、その延べ人数は1年間で100万~200万人ずつ増加しています。コロナが始まってからの調査では、不安な情勢を反映してか、温かさや安心感を覚えられるデザインが好まれるなどなど、いわゆる“定番返り”の傾向が見られるようになりました。
また、AIの予測精度を確認するため、調査結果の一部を学習データとして使わずに残しておき、AIの予測したスコア結果とどれだけリンクするかを比較していますが、現在は0.712(1がマックス)とかなり高い数値です。さらに、東京大学との共同研究により、アルゴリズムも定期的に更新し、この精度は上がり続けています」