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理想は語るが実行力がない…職場の「高い理想さん」とうまく付き合う方法

学び

「おいしそうなものを見ると、食欲を我慢できずについ食べて、太ってしまう」という経験はありませんか? 人間の心理を進化の視点から理解する「進化心理学」を専門とする石川幹人さんによれば、その理由は進化心理学で説明できるそうです。

人間関係

※画像はイメージです(以下同じ)

 石川さんは「私たちの祖先が食料を争うような厳しい環境下にいたため、食料があったら、あるだけ食べて飢えに備えていた特徴が引き継がれているから」だと言います。このように人間が進化によって獲得したものが、現代社会では問題になってしまう、ということは人間関係でも同じです。たとえば「みんなに対して優しい人」のことを「誰にでもいい顔をするはっきりしない人」だと感じてモヤモヤすることはありませんか?

 著書『いい人なのに嫌われるわけ』では、「いい人なのに、あの人、なんかイヤ」と思ってしまう理由を進化心理学の視点から解説しています。今回は「高い理想さん」タイプを紹介します(以下、同書より一部抜粋の上、再構成)。

理想は語るけど口先だけで実行力がない

「これからの時代を考えると、今の業務はこう改善していくべきだと思います」と、上司に新しい提案をしていた同僚。そんな提案が受け入れられて、同僚が旗振り役に抜擢されることになった。その場は周囲も歓迎ムードで、ようやく社内の業務もいい方向に変わるかと思いきや、一向に変化がない。

 どうやら、彼は新しいことを提案したことに満足して、実行するまでには至らない様子。そんな「高い理想さん」は、勢いもあって一目置かれる存在だったのに、呆れられて相手にされなくなってしまうハメに……。仕事を進めることにおいて、大きな目標を立ててプレゼンできる人は価値があります。特に風通しのよくない組織では何か変化をもたらす兆しになりそうだと、そうした発言は歓迎されやすいでしょう。

変革を提案するだけで勇者だった狩猟時代

書籍

石川幹人『いい人なのに嫌われるわけ』(扶桑社)

 狩猟・採集時代には、飢饉など集団が危機に瀕しているときに、このような人物がリーダーとして仲間の行動を統率する大きな役割を担っていました

 例えば、気候条件が悪く、長期間にわたって食べ物が確保できない状態になれば、今までにはない新しい判断をする必要があります。「それまでの生活拠点を捨てる」という打開策を選択しなければいけない場面も出てきたでしょう。これは、狩猟・採集民にとって、もっともリスクの高い行為です。

 そんなときに、勇気ある決断を率先して提案できる人物は、新天地を求める冒険心のあるチャレンジャーとして尊敬を集めることになります。もちろん、そうした目論見が失敗して、実際には集団がさらなる困窮に陥っていた可能性もあります。しかし、少なくともその場にとどまって死を待つより、生き延びる可能性を高める行動だったことは間違いありません

いい人なのに嫌われるわけ

いい人なのに嫌われるわけ

「いい人」のはずなのに、なぜか人をモヤモヤさせて嫌われてしまう人、あなたの周りにもいませんか?そんな人間関係の謎を、進化心理学の専門家である著者が「サルからヒトへの進化」「狩猟・採集時代から文明社会への変化」という視点から解き明かします

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