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中国籍の28歳アーティストが明かすNYの衝撃「アイデンティティが崩れた」

暮らし

言っても言わなくてもいい話を言う

チョーヒカル

――実際、どんなことを心がけていますか?

チョーヒカル:この前、ルームメイトとマーベル映画の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を見たんですけど、その悪役の人がめちゃめちゃイケメンで、悪いことをするけど、「イケメンだからつい許しちゃう」って私が言ったんです。そしたら、そのルームメイトがすごいしっかりした倫理観の持ち主で「子供に悪行働いてる、こんな人をかっこいいだけで許しちゃうのはおかしい」って。

 それを3回くらい連続で言われて、そのときは「あはは」って受け流したんですが、部屋に入ってからずっとモヤモヤしたので翌日、その子に「ちょっと」と言って、「別に怒ってるとか、本当に傷ついてるとかじゃないけど、映画見てるときに、そういうふうに言われたのはちょっとシュンとしました」と伝えました。

 それって、言っても言わなくてもいい話だけど、それをすることで空気がスーッとするし、正直にコミュニケーションできると思うんですよね。自分を冷静にさせてから、ちゃんと気持ちを言う。モヤモヤを溜めずに相手に伝える。伝えるうえで、なるべく相手の負担にならないようにする。家族以外の友人や職場の人とかにも同じく、このあたりは最近よくやっています。

辞めてもいいし、逃げてもいい

チョーヒカル

――若い会社員の読者に自分の個性を生かして働くコツを教えて下さい。

チョーヒカル:日本の会社員にまだなっていないので、個性を開放する術(すべ)をちゃんと与えられるかわからないのですが、みなさんが思っているより、何でも気にしなくていいとは思います。

 そもそも22歳のときに「新卒で就職しないと死ぬ」という空気感を捨てて、フリーランスになったし、26歳で増えてきた仕事が「9割減る」とわかっていても、アメリカに行きましたが、それでも元気に楽しく生きています。なにかここで失敗したり、空気を読まなかったりしたら一生ダメということはないです。

 辞めてもいいし、逃げたくなったら逃げてもいいし、逃げ道はずっとあると思います。

<取材・文/詠シルバー祐真 写真提供/チョーヒカル>

【チョーヒカル(趙燁)】
1993年東京生まれ。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され、衣服やCDジャケットのデザイン、イラストレーション、立体、映像作品なども手がける。多数のメディア出演に加え、企業とのコラボレーションや国内外での個展など多岐にわたって活動する。著書に『じゃない!』『やっぱり じゃない!』(フレーベル館)、『絶滅生物図誌』(雷鳥社)、『ストレンジ・ファニー・ラブ』(祥伝社)などがある

株式会社扶桑社第二編集局SPA!Web編集部「bizSPA!フレッシュ」編集長、詠(ながみ)です。映画と音楽が好きです。

エイリアンは黙らない

エイリアンは黙らない

注目のペイントアーティストが綴る、毎日間違えて、へこんで、社会の不条理さにくじけそうになっても、怒って、戦って、考えて、自分の足で歩いていく覚悟を込めた「成長」と「主張」のエッセイ集

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