叩かれても“路上飲み”する若者たちの言い分 「静かな外飲みもある」
会社から「ワンカン禁止令」が…
閉まった店舗の前で座ってお酒を飲んでいた30代の男性2人に声をかけると、大手アパレルショップの販売員だという。2回目の緊急事態宣言発令後に会社から「ワンカン禁止令」が出されており、匿名で写真を撮らないことを条件に話を聞く。
「僕らは今でも週2、3回はやってますけど、コロナ前はこのあたりでワンカンは当たり前の光景。ビームスさんはワンカン用のドリンクホルダーを商品化しているほどで、毎晩何組かやっていましたけど、今は見かけませんね」
近くに公衆トイレがなく、コンビニも貸してくれないため、膀胱が耐えられなくなるまで2~3缶を飲んで1時間程度で切り上げる。つまみはコンビニのホットスナック。予算は1人1000円いくかいかないかだという。途中から、後輩の新卒女性も加わった。さぞオシャレな会話をしているのかと思いきや、記者が飛び入りしてしばらくすると、性愛談義などそこらの立ち飲み屋で交わされるようなとりとめのない話題が続いていく……。
「裏原あたりは長年ワンカンをしている人たちが多い」と聞き、そちらに向かったが、飲んでいるのはコンビニ前の1組だけ。ワンカンの聖地には都心の静寂を肴にまったりとした空気が流れていた。
「路上飲みを止めさせる前に」若者の声
新宿・歌舞伎町へ向かう。23時を回ったシネシティ広場は、路上飲みをしている若者があちこちに見られ、ヤケクソのような賑わいを見せている。大声で騒ぎ、ゴミの散乱ぶりもひどい。
さつきさんと優太さん(ともに仮名・23歳)は大学からの友人で、社会人1年目。「ワンカン? 知りません。開いてる居酒屋探しながら飲んでます。やってるトコ教えてもらえたら嬉しいです」と、コロナ禍などどこ吹く風。こちらが不安になるほどの能天気ぶりだった。
後日、ワンカンをしたことがある大学生たちに話を聞いたところ、ダンスサークルに所属する都内の大学4年生、りこさん(仮名・21歳)は「サークルの文化としてワンカンをしていた」と回答。疲れて汗もかいている練習後は、その場で飲んで終電で帰るほうが「全員の需要にマッチする」と笑う。今はサークルの集まりがないのでワンカンはしていない。
飲食店でアルバイトをしている3年生の優花さん(仮名・22歳)は、コロナ禍以降バイト仲間とワンカンをするようになった。室内で飲むことに抵抗があり、店も開いていないというのが理由だ。「路上飲みを止めさせる前に、闇営業のお店の取り締まりとか、やることはほかにあるのでは」と若者ばかりが槍玉に挙げられる現状に疑問を呈する。
ほかにも「若者以外にも飲んでいる人はたくさんいる」(響子さん・仮名・21歳)、「店で飲むほうが危ない気がする。若者の路上飲みが元凶というのは言いすぎ」(沙彩さん・仮名・20歳)など、大学生からは同様の声が聞こえた。ただ、どれも自分が飲みたいだけという主張にも聞こえるが……。