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韓国・中国人がアカデミー賞で躍進。日本の映画界が負けている深刻理由

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日本映画界への2つの提言

オスカー像

Oscar academy awards gold statue trophy © Dimitris Barletis/Dreamstime.com

 ここまで、文化政策の欠如や製作会社のスタンスについて駆け足で論じたが、今のところ、日本映画を海外で展開するためのサポート体制は皆無と言っても過言ではないだろう。世界三大映画祭へのノミネートや出品に代表されるように、海外で評価される日本映画の多くは低予算であり、海外展開する製作体制を持った作品は少ない。

 では、今後どのようにしたら良いのだろうか。その方法には2つが考えられる。1つは日本の体力のある映画会社が海外で配給すること、そしてもうひとつは日本の映画監督が海外の製作会社と映画製作をできるようになることである

 まず、前者については上述した通り現状では映画会社に任せることは難しい。そうであるならば、映画以外で稼げる資金のある会社が、映画のプロを雇って、海外配給のみを担当するか、子会社としてサーチライト・ピクチャーズやA24のような作品性を重視した会社を設立し、製作・配給するという手もあるのではないか。

 そして、後者については人材育成が不可欠であるが、そもそも映画専門の教育機関が日本には少ない。ようやく2005年に東京藝術大学に大学院映像研究科映画専攻ができ、先日、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した濱口竜介監督を輩出したが歴史は浅い。一方、中国には北京電影学院が、韓国にはポン・ジュノを輩出した韓国映画アカデミーという有名な映画の学校があり、専門的な教育を行いながら数多くのプロフェッショナルを輩出している。語学力やビジネス知識を視野に入れた世界で活躍できる映画人材の育成機関をもっと作るべきであろう。

日本では映画4作撮るのが難しい?

 現在、映画を志す日本の若者たちは高校もしくは大学卒業後、映画美学校などの専門学校に通い、卒業後はテレビや広告の下請けの仕事をしながら脚本を書いて自主映画を撮り始める。そして頭角を表して海外の映画祭で受賞をすることもある。

 しかし、海外で評価されたところで、継続的に収益を上げる体制が整うわけではない。日本に帰ってきて、元々映画が好きな人たちが通うミニシアターで上映して終わる、というケースが多い。良作の観客の裾野が広がるような仕組みにはなっていない。

 ちなみに、日本映画では4作撮る監督がほぼいないという話を聞いたことがある。1作目が当たれば勢いで2作目を作る。続いて3作目まで作ることができればいいほうで、それ以降は金銭的な限界を感じて他の業界へ転向する、と。

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