文房具でヒット連発、キングジム開発者の発想法「10人中1人でも欲しがる物を」
コロナ感染拡大前からの販売商品が好調
他の多くの企業が市場のニーズを掴むためにマーケティングを行い、“マーケットイン”の考えで新商品を出す一方、キングジムは市場調査を行わずに開発者が思う「こんな商品があったらいいのでは」という“プロダクトアウト”の発想で新商品を出している。
「商品企画の段階でニッチなニーズに刺さるよう、広すぎず、そして絞り込みすぎずにターゲットを研ぎ澄ませています。そしてまずは市場に出してみて反応を見ることが、一番大事なポイントだと思いますね」
2020年に発生したコロナ禍。出社機会が減る企業のなかにはオフィスを縮小したり、解約したりするところも出てきている。そんな状況下、キングジムもコロナ対策の商品を発売して苦境を乗り越えようとしている。
「コロナ感染拡大前から販売していたアルコールディスペンサー『テッテ』は、結構売れていますね。また、ファイルを作っている技術や材料を活かし、飛沫感染のパーテーションやマスクケース、フェイスシールドなどを発売し、コロナ対策に役立ててもらえるような商品を出せるよう取り組んでいます」
日常生活に寄ったカテゴリーにも進出したい
まだまだ先の見えないコロナ禍だが、今後の展望について遠藤氏に聞いた。
「文房具ってこういった有事の際は、費用削減の対象になりやすいです。ただ、保存しなければならない書類の数や文房具を使う機会自体は劇的には減らないでしょう。今後はこれまで培ってきたステーショナリーをデザインする技術を、もっとライフスタイルに寄せたカテゴリーにも展開していきたい。コロナ禍でテイクアウト需要が増えていますが、『パッタン』という紙袋のようにパタパタと畳めるエコバックを開発し、販売したところ結構な反響をいただいています。
アイディアの着想は、妻がエコバッグを畳む時にいつもぐしゃぐしゃにしていたので、『もっとスマートに、綺麗に畳めるエコバックがあればいいのに』と思ったことでした。日常生活の中にも、いい商品に繋がるヒントはたくさん詰まっています。これからも、普段習慣化していて気づかないような“負”を解決できる商品を世に出していきたい」
開発者の想いが詰まった、アイディア溢れる文房具たち。次はどんなヒット商品が生まれるのだろうか。
<取材・文・撮影/古田島大介>