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文房具でヒット連発、キングジム開発者の発想法「10人中1人でも欲しがる物を」

ビジネス

「10人中1人でも欲しがる」世にない商品を

 さらに、キングジムには「10人中1人でも欲しがるものなら商品化する」というヒットの鉄則が存在している。遠藤氏は「“絶対に買いたい”と思うものかどうかが、商品化の判断基準」とし、次のように説明する。

「このような方針を貫くのは、社長のとある原体験がもとになっています。毎年ヒット商品の番付がメディアで発表されますが、あるとき社長自身ほとんど手元に持っていなかったことに気づき、『世の中で言うヒット商品は、何も日本人の多くが買うものではなく、ニッチ層の心を掴むものであればいいのでは』と考えるようになった。

 要は9割の人にとっては不要でも、1割の人にとってはものすごく愛着が湧き、高揚感を抱くような商品を作れればいい。いかに“隙間”を狙っていけるかが商品開発の肝になっています」

 野球に例えるなら10回打席に立ち、1度でもホームランを打てればいい。すなわち“打率1割”でも結果を残せれば、十分な結果であると考えるわけだ。

「数ある失敗作から学ぶ」が商品作りの秘訣

「私自身、これまで数多くの商品開発をしてきましたが、打率は低いほうです(笑)。学生や社会人向けに、裏写りしない厚い紙を採用した『スタンディア』というノートを出しました

 “集中力を切らさない”というコンセプトで、上質なノートという打ち出しを行って販売しましたが、実際には『ノートにそこまでの機能を求めていない』ことが露呈し、計画より売れませんでしたね」

キングジム

発売したものの、日の目を見ないままやむなく終売となった商品。左から「スタンディア」と「RELET(リレット)」

「また、私がデザインを担当した商品で、Suicaなどの残額がいくら入っているか確認できる『RELET(リレット)』という商品がありましたが、値段が8000円台と割高で、かつスマホと電子マネーが連携されるようになったことから、鳴かず飛ばずの結果となりました。

 ただ、失敗作だったとしても、まず市場に問うてみて、そのフィードバックをもらえること自体に価値がある。失敗から得た学びを生かして、次はいい商品が作れるよう、改善していくことを心がけています」

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