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リクルート社員が被災者とはじめた挑戦。3万人が愛用する「新しい市民証」とは

ビジネス

気仙沼のファンクラブサービスを開始

 観光体験ツアー、水産加工品の開発・販売、ご当地グルメづくりや観光ポータルWeb開発やインバウンド誘客、さらには地域商社的な取組など小松さんと私は気仙沼の資源の魅力を磨き上げるに特化した仕事を行っていった。そしてその中で、想い入れのある仕事があった。それが今も行っている「気仙沼クルーカード」という取り組みだ

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新しい市民証というコンセプトで気仙沼と関係人口をつなげる取り組みとして行われている気仙沼クルーカード

 この取り組みを一言でいえば、これまで話してきた気仙沼の資源を磨いて作った商品やサービスや人間、取り組みに、いつでも携帯からアクセスしてもらえる、つまり気仙沼のファンクラブ的なサービスとして開発したものだ

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気仙沼クルーカードの3.11の10年目に向けた取り組み

 小松さんとはさまざまな活動をしてきたが、資源を磨き続ける事業づくりだけでは限界があり、最後は「関係人口」を増やすことが地元の活性化が重要だった。そうでないと結局は一時期外部の人が来て盛り上がってだけで終わってしまう。

 気仙沼の人と外部の人がずっと繋がれる仕組みを作り、そこを起点として継続的に地域づくりを続けられないと意味がないのではないか? と。それが私の中でも気仙沼を去る前にやっておくべき最後の課題だと思っていた。

地域が関係人口とつながる重要性

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現在は「気仙沼クルーカード」携帯アプリもあり、復興が進む気仙沼の新たな復興の様子や観光情報なども手に入る

 この気仙沼クルーカード(現在は携帯アプリ)を持ってくれるだけで、アプリに街の復興の様子やお店、地域サービスなどがわかる。このカードを街でかざすだけで、「いらっしゃいませ」ではなく、「お帰り」と呼んでもらえるような世界が作れないかと、話をして作ったものだった。なので我々は「気仙沼の未来をつくる新しい市民証」と呼んでいる。2021年3月時点、約3万人の方がこのカードを持ってくれている。

「震災という災害はありましたが、それにより外の人が集い、地域の人との“相互触発”が町中で広がるとてもポジティブな変化もありました。地域にはそうした人の繋がりが一番重要だと思っています」

 私も気仙沼にいる間、どれだけ復興支援に携われたとしても結局は気仙沼を離れてしまう。つまり一時的なおカネやモノや事業を作っても継続性はない。大事なことは小松さんの言うとおり、そうした関係人口との切磋琢磨しつづけられる仕組みを街としてつくれるかどうかが最も重要なのではないか。

 これが私自身被災地に6年住んだ中で一番気づいたことかもしれない。

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