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「震災を機に気仙沼に移住」数億円の世界から離れて女性デザイナーが見つけた幸せ

暮らし

遠距離結婚で子供の世話も

気仙沼

子供たちにデザインを教える鈴木さん

 ここまで話を聞いてデザイナーとして仕事の価値を認めてもらうための奮闘エピソードだけでも驚きだが、なんと鈴木さんは結婚していて、旦那さまは千葉に住んでいる。遠距離結婚で、お子様もいるのだ。

「結婚は2018年にUターンで戻り、出会った方と結婚しました。子どもは私と一緒に住んでいますが、遠隔での関わり方ですが“一緒に育てている”という感覚です。コロナ前は月の4分の1くらいを千葉まで息子と行き、3人で過ごしていましたが、コロナになってからはやはりこちらからはいけなくなったので向こうから今は来て、気仙沼や近隣各所に泊まって旅している感じです(笑)」

 お互い離れ離れでの育児生活に不安はないか聞いたが、「旦那さんとはお互いの働き方を大事にしたいということで離れて暮らしています。色々ありますが、これが私たちの今の形なのかなと。あくまでお互いの価値観を大事にしたいからやっていることで。サラリーマンでいうところの単身赴任みたいなものと思えば、さほど驚くことでもないかなって」と答える。

 確かに言われてみればそうだが、夫婦互いの価値観の尊重は大事なこと。そうやって、いろいろとうまくやっている鈴木さんにこれからの夢を聞いてみた。

ローカルと世界をつなぐ環境づくりを

気仙沼

©︎ Hiromi Furusato

「ローカルでも、デザイナーや多様な分野の仕事が活躍できるということを知ってもらえる機会をみんなで作っていきたいです。その分だけ街が楽しくなると思うから。なので、たとえばオンラインでシリコンバレーとつないで、現地の人たちとデザインワークショップをやったり、今後も海外のクリエイターの学びをローカルにいながら知れたりする環境を気仙沼に作っていきたいです」

 最後に一番大事にしていることは? と聞くと「無理だと思うものも、一度動いてみる。動いた後に案外できることや違った景色が見えることがある。“無理”というのが、実は自分で作ったハードルだったんだなと気づくこともたくさんあります」と答えてくれた。

 今回の鈴木さんの話を聞いて、「自分が勝手に作ったハードル」を壊すことの大切さに気づかせてもらった。そして、気仙沼だけでなく、多くのローカルに発想力とクリエイティブの価値が今後課題となっていくであろうと感じた。個人的に、そういった人材を育てていける地域が今後、元気な街になっていくように思う。

<取材・文/森成人>

関西大学卒業後、1999年リクルートに入社。新規事業開発の仕事を経て、2013年4月より被災地気仙沼市へ出向。仮設住宅暮らしをつづったブログ「気仙沼出向生活」が話題。現在はじゃらんリサーチセンターに所属しながら気仙沼市復興アドバイザー、さらに観光庁登録の専門家として地域活性の仕事に従事

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