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『こち亀』両津勘吉のビジネスセンスは現実でも通用するか

ビジネス

『こち亀』が「エコとロハス」を受け入れた訳

こち亀

秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所 200』(集英社)

 2つ目は、ハイコンセプトかつ社会合理性の高い理念を、どのような方法をもって(『こち亀』が代弁するような)大衆(≒衆愚)に受け入れてもらうか――を考えた時のヒントが落ちているということ

「たとえば、『こち亀』は、2000年代中盤頃より“エコ”や“ロハス”を取り上げて、『うさんくさいもの』『企業が善人ヅラして自分たちを騙そうとする際のバズワード』として、不信感を露わにしていました。ところがある時期から、『テクノロジーに対する興味』を媒介にして、エコを受け入れ始めるのです。エコの権化たる電気自動車について両津は、『エコだから』ではなく『技術上の先進性がすごいから』という理由で興味を惹かれます。

 ARゴーグルを通じてゴミ拾いをしたり、かつて日本にあったトロリーバス(架線で電気を供給する電気動力のバス)を復活させて街全体を電化させる――という試みを実現したり。ここにおいて両津は『地球環境に優しいから』ではなく、『おもしろそうだから』という動機で、エコに意欲的をもって取り組みました。エコに頑なだった最初の頃の両津からすると、信じられないほどの態度変化です」

 ビジネスの現場において、態度を硬化させている人間にどうしたら話を聞いてもらえるのか。どう説得すればいいのか。そのヒントが『こち亀』にはゴロゴロ落ちているのだ。

『こち亀』は基本的に一話完結。これを機に、読まず嫌いにするのではなく、まずは気になった回から手にとってみてはどうだろうか。

<TEXT/bizSPA!取材班>

編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆
【WEB】inada-toyoshi

『こち亀』社会論-超一級の文化史料を読み解く

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