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『100日後に死ぬワニ』きくちゆうきが語る、“唯一の後悔”と次回作

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“余韻”を残せなかったのが、唯一の後悔

――その炎上ですが、今、振り返っていかがですか?

きくち:作品と別のところで話題になったのが、残念でした。いろいろな人が関わって、映画化とか音楽とか頑張っていたんですが、楽しんでもらえると思ったら「裏の裏がある」みたいになっちゃって。ただ、今思えば“余韻”がなかったといえば、そうだったかもしれない。でも、途中でそれらの情報を出したらきっと冷めちゃうでしょうし、連載終了から1週間後では遅いと思ったし、どのタイミングが正解だったのかというと、難しいなぁというのが正直なところです。

 そういえば、連載終了後に新幹線に乗っていたら、見知らぬ人から手紙を渡されたんです。「もしかして苦情が書いてあるのでは?」と中身を見たら「ありがとうございました」という感謝の手紙で、救われました。普通に考えたらそうなんですが、当時は神経質になっていたんでしょう。

――きくちさんのこれまでの歩みも聞かせてください。公式プロフィールを見ると、漫画やゲームからの影響が大きかったんですか?

きくち:そうですね。ドラクエ、特に鳥山明先生の影響はめちゃくちゃあるかもしれないです。ただ、僕の絵はすべて独学で、小学4年生のとき、「バトエン」ってわかります? ドラクエの。そこに描いてあるモンスターを授業中ノートに描いて、授業が終わったら友達に見せてました。でも、学生時代はまだ漫画を描こうとは思ってなくて。高校卒業後も大学へ行くお金もないし、就職するのも違うかなって、とりあえず絵を描きながら、バイトして、家にいて……っていう毎日でした。

――周囲からのプレッシャーは?

きくち:特になかったです。僕の友達はみんなそんな感じだったんです。でも4年制の工芸高校を19歳で卒業して、20歳のときに仲が良かった友達が事故で死んで。気持ちを切り替えなきゃと思いつつ、10人くらいのいつものメンバーと毎日のように集まって、ずっとダラダラしてましたね。

 楽しかったというより、その当時「もう自分の人生終わったな」くらいの感覚になっていたんです。だから、一度終わったから今はボーナスタイムを楽しんでるんだ、みたいな気持ちでした。

就職はいろんな意味でツラかった

きくちゆうき

『100日後に死ぬワニ』 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)

――生活費はどうしたんですか?

きくち:友達と一緒に弁当屋やデリバリーのバイトで月25万円くらい稼いでました。別にやりたいこともないからこのバイトでもいいのかなって、朝から深夜まで。そうしているうちに友達が就職して、僕も24歳くらいのときに一回、印刷会社に就職したんです。

――会社勤めはいかがでしたか?

きくち:そうですね……いろんな意味でツラかったです。

――会社での人間関係とか?

きくち:いや、入ってすぐやっぱ違うなと思い「絵を描きたいから辞めたい」って言ったら、「だったら会社で描けばいいじゃん」って言われて。そしたら異動になって、社長の目の前の席に座らされて「ここで描いていいよ」と。

100日後に死ぬワニ

100日後に死ぬワニ

日本中が見守った100日間、待望の書籍化。ここでしか読めない、描きおろしも28ページ収録!あたりまえ。だから、愛おしい。

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