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マスクは「1人1箱まで」…黙って2箱買ったら詐欺罪になるのか?

暮らし

「咳で非常停止ボタン」法的にはセーフ

 マスクをしていない乗客が電車の中で咳き込んだことに腹を立てた他の乗客が非常停止ボタンが押すという騒動がありました。このような理由で非常停止ボタンを押してしまうと、民事と刑事の2つの責任に問われる可能性があると後藤氏は話します。

「まず非常停止ボタンを押した者に対し、鉄道会社が民事上の不法行為責任に基づく損害賠償請求ができる余地があります。そして刑事上では業務を妨害したとして、鉄道会社に対する偽計業務妨害罪が成立する余地もあります。もっとも、偽計業務妨害罪は原則として『ボタンを押したことで鉄道会社の業務が妨害されるかもしれない』という“故意”がなければ成立しません」

 今回のケースで見ると、確かにこの程度で非常停止ボタンを押すというのは行き過ぎた行為であり、「鉄道会社の業務が妨害されるかもしれない」と理解したうえで、非常停止ボタンを押したともいえそうです。

「いえ。コロナウイルスの感染が拡大している現状においては、マスクをせずに咳き込んでいる人を見てある程度心配になるのは仕方ないとも言えます。あくまでマスクをせずに咳き込んでいたことを問題視して非常停止ボタンを押した可能性もあります。

 したがって、今回のケースでは、非常停止ボタンを押した人の“故意”が認められなければ、鉄道会社に対する偽計業務妨害罪は成立しないといえます。そして、民事でも不法行為に基づく損害賠償請求をすることも難しいと思われます」

 マスクやトイレットペーパーをめぐっての混乱はまだ続いています。不安をあおる情報に左右されることなく、常識的な行動を心がけたいものです。

 次回、<職場の「リモートワーク指令」を無視して出勤したら…懲戒処分になる?>に続く。

<TEXT/林加奈>

子育て中のママライターです。大学卒業後、通信関連会社、広告代理店等を経て結婚後にフリーランスのライターに転身。法律、子育て、キャリア、就活など、さまざまなジャンルの記事を執筆しています
Twitter:@emma_webwriter

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