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気鋭のイタリア人監督が見た「日本と欧州の不遇なエリート中年」

 職を追われた不遇な中年エリートたちが、純度の高いドラッグ製造のために奮闘するイタリア発のぶっ飛び風刺コメディの続編『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』が公開中です。

いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち

『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』

 第2作目となる本作は2009年にギリシャから始まった欧州危機を背景に、神経生物学、化学、記号学、考古学、ラテン語学などの不遇な高学歴エリートが、過激にミッションをこなします。今作が長編映画2作目となるシドニー・シビリア監督にインタビューしました。本作にとどまらず、自身の20代を振り返り、日本の若者へのメッセージを聞きました。

きっかけは、ある新聞記事を目にしたこと

シドニー・シビリア

シドニー・シビリア監督

そもそも大ヒットを記録した1作目から、不遇なエリートたちを主役にしようと思われたきっかけはなんだったのでしょうか。

シドニー・シビリア(以下、シビリア):研究者って、ある意味どの時代のどの世代でも不遇なものだとは思っていた。ただ、直接的なきっかけは、新聞記事を目にしたことなんだ。ある哲学科を卒業したスーパーインテリジェントな人たちが、毎朝、地下の掃除をしているという内容だった。

――1作目の反響には、研究者からのものも多かったと聞いています。

シビリア:そうだね。1作目が公開されると、すごく反響があった。そして、こんな経験をした、あんな経験をしたと、研究者たちが話してくれるんだよ。でも、「ごめん、もう作っちゃったんだ」という状況だった(苦笑)。

 そんななかで役に立ったのは、外国で上映されたこと。海外でここまで反響があるとは思っていなかったんだけど、アジア、北欧、アメリカといい反応をもらった。

 どこに行っても、現地にいるイタリア人研究者たちが詰めかけてくれた。そして、「俺たちは、かの有名な“流出頭脳”の張本人だ。なのに、ここには俺たちのことが語られていないじゃないか!」と言われた。それで、「次に作るときは入れるから」と。実際、ストーリー的にも必要があったから、今回は頭脳流出に絡んだ登場人物たちを入れた。約束が果たせたよ。

彼らは実生活ではむしろ生活不適合者

――本作では、決して少なくないキャラクターたちが、それぞれの個性を発揮しながら、テンポのいい会話劇を展開させ、そこにアクションまで盛り込まれています。脚本はパズルを組み立てるような作業だったのではないかと。

シビリア:大変だったよ! 脚本を書くというのは、製作全部の過程を通じて、一番楽しくてワクワクする作業だけど、同時にすごく大変なんだ。今回の脚本を完成させるまでに2年くらいかけて、自分を含めた3人の脚本家が、小さな部屋で物語をどう回らせていくか、顔を突き合わせて話し合った。

 だからその感想はすごく嬉しい。これはダイアログ、セリフ劇であり、アクションでもある。この映画に新しさがあるとすると、そこだと思う。

 イタリア式のコメディって、会話のおかしみで見せるものが多いなかで、そこにアクションが重なっているのは、かなり新しいものだったんだ。アメリカ映画の場合は、アクションだと今度は会話が少なくなるよね。一言二言交わしてすぐに戦い始める。こういったアクションコメディが成立したところに、新鮮味があったのかなと思う。