東急大井町線の“有料指定席”に乗ってみた。見えた課題も
Qシートを3号車のデハにした理由
溝の口を発車すると、先行の各駅停車長津田行きに接近するのか、ノロノロ運転。トンネル内で上りの8500系がけたたましい走行音をたてて、すれ違う。
一方、6020系は田園都市線用の2020系と同様、低騒音型の主電動機や駆動装置を採用し、車両騒音の低減を図っている。灯具のオールLED化も相まって、8500系に比べ、消費電力を約50%削減したという。
そして、3号車のQシートはモーターを搭載したデハ(電動客車。JRなどではモハを用いる)。モーターのない先頭車のクハ、中間車のサハは車両騒音が少なく、居住性の点でよさそうに思える。以前、報道公開で車両課に伺ったところ、2つ理由があることを述べた。
1つ目は、大井町は改札が1号車寄りしかないので、そこに設定すると、ホーム上において乗客の流動を阻害する恐れがあること。2つ目は自由が丘で大井町線下り列車の乗客が増えること。このため、Qシートの連結位置を3号車と4号車にしぼって議論したところ、「3号車だとQシートに乗車しない方の流動を阻害しない」という結論に達したという。実際、自由が丘では乗客の流動を阻害するような動きはなかった。
Qシートの車両騒音も気にならない。ノロノロ運転時はモーターの音が聞こえないほど静かなのだから。
乗ってみてわかったQシートの課題
鷺沼で各駅停車長津田行きの接続はなく、たまプラーザからフリー乗降区間へ。Qシート担当車掌はここで降りた。フリー乗降区間では思ったほど乗客が増えず、江田で各駅停車長津田行きを抜く。隣の国道246号線(通称、ニーヨンロク)は上下線とも渋滞し、無数のヘッドライトとテールライトが夜景を作り出す。
青葉台でQシートの空席が増えてゆくが、乗客の多くは乗車専用駅から終点長津田まで利用。着席ニーズの高さを表している。
ラストコースは田園都市線最速の110km/hで飛ばし、田奈を通過。JR東日本横浜線に合流すると、20時15分、終点長津田4番線に到着した。回送して長津田検車区付近まで引き上げると、江田で抜かれた各駅停車が向かいの3番線に到着した。
Qシートの居心地はよい。ただ、ホームドアのプログラムが関係しているのか、全区間4つすべての乗降用ドア開閉が気になる。今後は大井町―鷺沼間を1つのみ開閉にすれば、誤乗防止のほか、車内保温の向上にもつながる。
6020系には、1両片側4つある乗降用ドアのうち、ひとつを除いて締め切るスイッチ(3/4扉閉制御)を設けている。3号車のみ有料区間は1か所開閉に限定するなど、改造が必要になるだろう。
また、2代目6000系と6020系は、大井町線の急行専用車両だ。前者の3号車をすべてQシートにすれば、田園都市線直通列車に限り、終日指定席化し、有料座席指定サービスの向上を図るのも一考だ。
新生東急電鉄初日となる2019年10月1日に田園都市線、大井町線でダイヤ改正を実施する。目玉は日中の大井町線急行で、毎時2往復の運転区間を大井町―中央林間間に延ばし、利便性の向上を図ることだ。これを起爆剤に2020年代は、Qシートの発展を期待したい。
<取材・文・撮影/岸田法眼>