東急大井町線の“有料指定席”に乗ってみた。見えた課題も
ロングシートも有料座席指定サービスの対象に
Qシートが連結されている3号車は、4つの乗降用ドアがすべて開く。それぞれ駅員が立ち、列車指定券の確認を行なう。当初はスマートフォンのスクリーンショットを駅員に提示しようかと考えたが、不正乗車防止の観点からか、現在時刻が表示されるため、やむなくアクセスして見せる。
車内の室内灯は電球色で特別車両を強調。日が暮れると、電球色の温かみが増す。できれば調色機能をつけて、オールロングシート運用時はホワイト、Qシート運用時は電球色に変えていっそうの特別感を出してもよさそうだ。
私が指定したクロスシートに着席。リクライニングはしないが、座席背面にカップホルダー、座席下にコンセントを装備。一応飲食はできるが、車内にトイレがないので、乗車前に済ませたほうがよい。
シートピッチは1010ミリ(一部を除く)で、東武鉄道の500系リバティより10ミリ広い。しかし、デュアルシートの構造上、暖房が床置き式なので、足が伸ばしにくい。これは簡易優等車両の宿命と言えよう。また、荷棚が低い位置にあるので、荷物も容易に載せられる半面、立ちあがったときに頭をぶつける恐れがある(実際、ぶつかってしまう乗客がいた)。
窓框(まどかまち)には白いテープを貼付。おそらく滑り止め対策で、そこに飲み物などを置いたとき、落下を防ぐためと考えられる。
一方、3人掛けロングシートは着座幅525ミリで、ほかの席に比べ65ミリ広いゆとりがウリ。京王電鉄の〈京王ライナー〉ともども、ロングシートを指定席にする発想に驚かされる。東急では、車椅子やベビーカーなどを利用する場合、向かい側にフリースペース(車椅子&ベビーカー用)がある1~3E席の利用を勧めている。
大井町―長津田間26.6キロの所要時間は約45分、大人運賃はたった300円(IC運賃299円)。列車指定券を加えると700円(IC運賃+列車指定券=699円)。JR東日本の電車特定区間に換算すると運賃は470円(IC運賃464円)なので、東急の運賃の安さが際立つ。
溝の口で駅員が乗車をブロックするも
急行191号長津田行きは定刻通り19時32分に発車。Qシート担当車掌1人が乗り込み、案内役を務める。4ドアすべて開閉するので、車内の切り盛りをするのが大変そう。1号車に乗務する車掌はQシート乗車駅停車中、「この電車の3号車は、指定席Qシートです。御利用には指定券の事前購入が必要です」という車内放送を入れて、3号車に“券なし客”が立ち入らないよう努める。しかし案の定、大岡山で女性1人が誤乗してしまい、Qシート担当車掌にひたすら平謝りして自由が丘で降りた。
東横線乗換駅の自由が丘でほぼ埋まり、定刻より1分遅れの19時43分に発車。夜の街を快走し、田園都市線に合流すると、19時48分、二子玉川2番線に到着。向かいの1番線に田園都市線の各駅停車中央林間行きが到着しようとするものの、接続をとらず定刻通りに発車。ここから溝の口までは複々線で、東急は基本的に内側を大井町線、外側を田園都市線に分けている。
急行191号長津田行きは田園都市線直通列車なので、外側を走る。通過する二子新地、高津は、すでにホームドアが設置されており、列車通過時の安全性が向上した。
19時52分、溝の口に到着。3号車乗車口では駅員4人が立ち、乗車をブロックする。別の駅員は「3号車御利用のお客様、ほかの号車を御利用ください」、1号車の車掌も「3号車は指定席Qシートです。当駅から御乗車にはなれません」と案内するも、発車直前、スキをついて女性1人が乗車。当該駅員に指摘され、ただちに隣の4号車へ向かった。このような厳戒態勢では、Qシートの乗客は落ち着いて過ごせないのではないだろうか。