園子温監督の“性加害”疑惑報道、謝罪文が公開されてもモヤモヤする理由
2022年4月5日に発売された『週刊女性』で、映画監督・園子温氏の性加害について報道された。過去の作品に出演していた女優らの告発も明るみとなった形だ。そして、4月7日には、『週刊文春』によって、園子温氏の片腕とされるプロデューサーの梅川治男氏が女優に性的写真を要求するメールを送っていたことが発覚。
また、『蜜月』『ハザードランプ』で監督を務めた榊英雄氏や俳優の木下ほうか氏が、性暴力で告発されたことは記憶に新しい。本記事では年間に1100本の作品を鑑賞する映画ライターの筆者(@MovieBuffys)が、映画業界にはなぜ“悪しき風潮”が残り続けているのかを考察する。
海外では大御所よりも知名度がある
園子温氏といえば、『愛のむきだし』(2009)、『冷たい熱帯魚』(2011)、『ヒミズ』(2012)といった奇抜な作品から、『TOKYO TRIBE』(2014)、『新宿スワン』(2015)などの漫画原作など幅広く手掛ける中で、2021年はニコラス・ケイジを主演に迎え、『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』でハリウッドデビューを果たした。
海外では、日本映画は流通形態の問題もあってか、エログロのイメージが強い。それもあってか、園子温氏は、世代によっては山田洋次や北野武といった大御所よりも知名度がある監督のひとりだ。海外の大手メディア『ハリウッド・レポーター』や『ヴァラエティ』などでも今回の1件を取り上げている。
なぜ今まで放置されていたのか
ご存じの通り、バイオレンスやエロス描写を取り入れた作品が多く、常にアンダーグラウンドな香り漂う監督である。そんな作風に通じるかのように、今までにも、パワハラやセクハラの噂が絶えない監督のひとりでもあった。
今回の報道を受けて、「ついに暴露された」「有名な話だった」という映画関係者の証言が飛び出してきている。だとしたら、なぜ今の今まで放置されていたのだろうか。証拠は出そうと思えば出せたはずだ。
「黙っていたのも同罪じゃないか」という、極論もあるかもしれないが、これは映画やドラマの製作構造自体が関係しているようにも感じられる。多くの関係者がかかわっていることもあり、下手に暴露してしまうと、自分たちや関係者に多大な被害が及ぶからではないか。
声を上げる勇気だけではなく、作品にかかわっている、無関係のスタッフを路頭に迷わせてしまうリスクもあるのだ。だからこそ慎重になるがあまり、結果的に見逃され、闇に埋もれてしまうのだろう。