文房具でヒット連発、キングジム開発者の発想法「10人中1人でも欲しがる物を」
仕事や日常生活に欠かせない文房具。最近では、便利で使い勝手のいいだけでなく、おしゃれなものや面白いものなど様々なアイテムが文房具メーカー各社から発売されている。
そんななか、文房具業界で独創的な商品を世に出してきたのがキングジムだ。ラベルライターの「テプラ」、デジタルメモの「ポメラ」、アナログとデジタルを融合させたノート「ショットノート」などヒット商品を開発している。
株式会社キングジム 開発本部ステーショナリー課 リーダーの遠藤慎氏に、商品開発で工夫していることや今後の展望について聞いた。
「ポメラ」の成功で独創的な商品開発を
遠藤氏はキングジムに入社し、15年のキャリアを築いてきた。新卒から2年間は「テプラ」の開発部門のアシスタントとして従事。しかし、デザイン系の大学出だったことから「インハウスのデザイナーとして、文房具の花形であるノートやペンの開発に携わりたい」と異動を願い出ることに。
「当時のキングジムはノートやペンといった文房具カテゴリーの商品を販売していませんでした。モノづくりが好きで、『プロダクトをデザインする部門に行きたい』と要望を出し、商品企画部でデザインをやらせてもらうことになったんです」
時を同じくして、キングジムは「テプラ」に次ぐ主力商品になる「ポメラ」を2008年に発売。著作家や小説家、ライターなどの限られた人向けの商品だったが、「文章を書くことだけにこだわりたい」というニーズに見事合致し、大ヒットする。
「『テプラ』の成功で『独創的な商品開発を積極的に行おう』という社風が醸成され、2008年の『ポメラ』が大きなヒットを生んだことで、より新しいことへチャレンジする文化が根付いていきました。自分のデザインした商品が、世の中の多くの人に使ってもらえる。そんな目標を掲げながら、よい商品案を出そうと頭を捻らせていましたね」
ひょんなことから生まれた「ノート」
そんな状況のなか、遠藤氏のチームが発案した「ノートカバー」が当時のキングジムにはなかったノートカテゴリーの商品として“プチヒット”した。ノートの使い方に合わせて、自由にカスタマイズできる機能性に特化したことで、「自分仕様のシステム手帳が作れる」と好評を博したという。
そのノートカバーをアップデートさせる形で、後に「ショットノート」の発売に繋がったというが、実は“ふとしたきっかけ”からアイディアを思いついたそうだ。
「社内の女性社員の中にノートをまめに取る人がいて、いわゆる『メモ魔』といえるくらい、ノートの隅々まで情報が書かれていたんです。ただこれだと、ノートに書き留めたものの中から欲しい情報を探す際、瞬時に取り出せない。
そこで、『もっと検索性があり、便利なノートがあればいいのに』と考えるようになった。私自身、携帯電話のカメラ機能を使って手書きメモを自分宛に送る『写メ世代』でもあったことから、『手書きしたノート』と『携帯端末のカメラ機能』を連動させることを思いついたんです」