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ToDoリストでは生産性が上がらない?一部の人にだけ効くのはワケがあった

なぜ時間の記録が効く人がいるのか?

 もうひとつ「タイムログ」についても考えてみましょう。自分が行った作業の開始時間と終了時間を記録し続ける手法のことで、何度もくり返すうちに作業時間の見積りがうまくなると考えられています。

 もっとも、その効果量についてはToDoリストと変わらず、タイムログで作業のパフォーマンスが上がるという証拠は一部の人にしか確認されていません。このテクニックの効果については、どのように考えるべきでしょうか? こちらも結論から言うと、タイムログでパフォーマンスが上がりやすいのは、「想起の誤りが大きい人」または「想起が肯定的すぎる人」です。

・実際は締め切り間際まで大慌てだったのが、「先週はスムーズに進んだから今回も問題ないだろう」と考える
・現実は他人の協力を得たのに、「普段はひとりでこなせているから今回も問題ないだろう」と即断する

 このように、想起の内容が実態を反映しておらず、「タスクの完了に必要な時間の量」や「タスクの完了に必要な個人の能力」の確率を甘く見積もってしまう人は少なくないでしょう。かくいう筆者もこのパターンにはまることが多く、原稿の執筆時間を見誤るケースがしばしばです。

記憶の濃淡が異なる「ポリアンナ効果」とは

脳

 この問題が起きる原因の代表例として、「ポリアンナ効果」と呼ばれる心理を紹介しておきます。これは、不快なものよりも楽しい出来事をより正確に記憶しやすい認知バイアスのことで、エレナ・ポーターの小説『少女ポリアンナ』の主人公が、あらゆる状況にポジティブな側面を見ようとするところから名づけられました。

 ポリアンナ効果が強い人は、不快な情報よりも、楽しい情報を優先して脳に取り込もうとします。締め切りよりも前倒しで作業を終えた体験や、難しいプロジェクトを自分だけでやり遂げた記憶など、自分に都合がよいデータばかりを脳に蓄積させた結果、実際よりバラ色の想起しか呼び出せなくなるのです。

 もちろん、ものごとを楽観的に考えるのは悪いことではなく、気分が無駄に落ち込むのを防いでくれますし、自分に自信を持つためにも欠かせない能力ではあります。とはいえ、つねに過去をバラ色のレンズで見ていたら、正確な能力を発揮できなくなってしまうのも事実でしょう。

 このようなケースにタイムログが効く理由は、説明するまでもありません。普段からタイムログに過去の使用時間を残しておけば、あとからポジティブな想起が出てきたとしても、自分自身に“動かぬ証拠”を突きつけることができます。これが一部の人にだけタイムログが効く理由です。

<TEXT/科学ジャーナリスト 鈴木祐>

科学ジャーナリスト。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ね、多数の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。著書に『YOUR TIMEユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』『最高の体調』『科学的な適職』他ベストセラー多数

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