おいしい焼肉店を選ぶ重要ポイント。ホルモンなら「ガスより炭火」
ホルモン×炭火の利点はさらに…
実は炭火の利点はラクに水分を抜くことができるというだけではない。
「炭焼き加熱特性の解析(第2報)炭焼き食品のにおいの検討」という論文によれば、焼き色や水分蒸発についてはガスと炭火で有意差はないものの、「[ガス網焼き]加熱では豆臭を持つヘキサナールの影響が強く出るのに対し、[炭火焼き]のほうは好ましくないにおいを持つ脂肪族アルデヒド類が[ガス網焼き]より少なく、香ばしい香りを有するピラジン類やピロール類が多いという顕著な違いがある」と、香りについて好ましい結果が出たという。
俗に言われる遠赤外線や焼き色、水分などの優位性は証明されずとも、香りというもっとも味に直結するところで差異はある。あとはくれぐれも炎上させないように焼くだけだ。
赤身はガスロースターのほうが優る
肉にいい香りがつくということは、やはり炭火×網が最強……? ところが、赤身の正肉を焼くとなると、俄然ガスロースターが息を吹き返す。
前項でホルモンをガスロースターで焼こうとすると「伝導熱が伝わるスリットの接地面以外には火が強く当たらず、クニュッとした食感の悪い部分ができてしまう」と書いた。スリット入りのガスロースターのセンターの中火ゾーンは伝導熱が強く作用するエリア。表面に焼き目をつけつつ、接地面以外には強く熱が伝わらないということになる。
その熱伝導性が赤身肉にはうってつけなのだ。タンやハラミ(と心筋)以外の横紋筋の部位―赤身の正肉は強く加熱すると縮む。結合組織が縮むと筋線維から水分が絞り出され、食感も硬くなってしまう。だから焼きすぎたくはない。
ところが、日本における焼肉はほとんどが数ミリ程度の薄切り肉だ。この程度の厚さで、全面に熱を当てると、香ばしく旨味を伴うメイラード反応の焼き目がつく頃には返さなくてもほとんど火が通ってしまう。
ところがスリット入りのガスロースターの中央に肉を載せると、接地している高温部分には焼き目で香ばしさと旨味がつき、接地していない部分には熱が入りにくい。ホルモン相手では弱点だった特徴がストロングポイントに変わるのだ。