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年商400億円「巨大魚屋チェーン」創業者に聞く、安さの秘密と苦節47年

ビジネス

フランチャイズと契約を解消したワケ

――それだけ繁盛すると、あちこちから「うちにも出してくれ」と声がかかったのではないでしょうか。

柳下:しかし、うちの財力からしてもそんなに続々とお店を出せるわけではありませんのでお断りする機会ばかりでした。そのうち「じゃあ、自分たちで初期投資をするので、角上魚類の看板を借りて、魚の供給と魚の売り方を教えて欲しい」という声がかかりました。

――フランチャイズということでしょうか。

柳下:そうです。高崎に出した店の2年後のことでした。「初期投資がかからないのであればできる」と快諾し、当初は当初は私が各店に出向いて、売り方、並べ方など指導をして店作りをしました。このフランチャイズの店も結構流行って数年で4店舗くらいになりましたが、次第に各店がテキトーな売り方をし始めました。「値段を高くしたらダメだ」「古い魚を売ってはダメだ」と言っても聞いてもらえなくなったのです。「昔ながらの魚屋をやる」と常々考えていた私はこれが許せませんでした。

 やがて「これは私の目指す魚ではない」と思い、「フランチャイズを打ち切らせてもらいたい」と申し出たところ向こうも喜んでくれました。フランチャイズ契約であれば、指導料とフランチャイズ料で1店舗あたり月80万円くらいを角上魚類側に納めていたわけで、ここで打ち切りになればその経費が浮きますからね。

 以降、私は自分の目が行き届くきちんとした直営の魚屋をやろうと、関東圏に角上魚類を少しずつ丁寧に出店していくことにしました。契約をヤメたフランチャイズの店も当初はものすごく流行っていましたが、結果的に5~6年で全部潰れました。

調子が良くて流行っているときほど気を使う

――柳下さんの営業方針が正しかったということですね。

柳下:どんなことでもそうですが、「今日、調子が良いから」と、いい加減にやってはダメ。確かに調子が良ければ、どれだけいい加減にやってもすぐに影響はないでしょう。でも、これが1か月、2か月、半年、1年後になるとジワジワとダメになっていきます。

 どれだけ調子が良くて流行っていたとしても、そういうときほど常に気を使って、より良い工夫をする努力を重ねていかないとお客さんは離れていきます。以来、角上魚類のスタッフにも慢心を起こさせぬよう、細心の注意をはらい続けています。

角上魚類

角上魚類の社訓ならぬ「社心」。お客さんに寄り添い魚を売ることを意味

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