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「母と同じバイト先でゲンナリ」のハズが…人生観を変えた“ある一言”

コラム

クビを通告?のハズが、まさかの一言

「掃除といっても、20人も入ればいっぱいになる小さな会場を隅々までチェックし、汚れている部分だけをキレイにする簡単なものでした。母親の罵りに耐えつつ掃除を終えたとき、リーダーが入ってきて『明日からは1人でいい』と言われたんです

 その言葉を聞いた母親は「ほら、アンタがちゃんとしないから」と、耳元で罵りはじめました。パートをクビになるだけでもツラいのに、母親にまで罵られ、とても惨めな気持ちに。涙を抑えて、「いままでお世話になりました」と言いながら頭を下げようとしたときでした。

「リーダーが鬼のような形相で、『カーッ!』というような奇妙な声を出しながら走り寄ってきたんです。それはもう言葉にできないほど恐ろしく、下手なホラー映画よりも迫力がありました。そして、『そうじゃない! アンタだけでいいって言ってるの! どこまで自分に自信がないの? 自信を持て!』と怒鳴られたんです」

 そしてリーダーは、怒り口調のまま明日のスケジュールを伝え、出勤できるかどうかを尋ねました。状況が飲み込めない母親は、混乱した様子のまま、明日も出勤できるとリーダーに伝えます。

クビにしたのは母親のほうだった

すかっと

「リーダーが『いや、だから明日からは1人だけでいいんです』と言っても、母は不思議そうな顔で、『え? だから、娘は明日から来なくていいんですよね? そしたら私、ちょっと1人でここまで車を運転してくる自信がなくて……』と食い下がっていました」

 母親は、自分がクビだというのが信じられなかったのではないかと、水本さんは推測します。しかし、そのあとリーダーは、母親がしっかりと理解できるよう、語気を強めてはっきりと説明をしてくれました。

「リーダーは、『よく見てください。私は娘さんのほうに向いてスケジュールを聞いてるんです。そして、“来なくていい”というのは、娘さんに言っているんじゃない。お母さん、あなたに言ってるんです。あなた、普段から娘さんに“察しろ”って言ってるわりには、察することができないんですね。次からは、娘さんだけで大丈夫です』と言ってくれたんです」

 リーダーは、水本さんが母親から罵られていることに気づいて助け舟を出したのでした。そして、「アンタは物覚えもいいし、まわりの状況を見てきちんと動ける子。自信を持ってと励ましてくれたため、気分がスカッとして人生観も変わったと言います。小さいときから「ダメな子」や「ほら、言った通り失敗した」など、親から心無い言葉をかけられていた人は、自己評価を下げすぎていないか振り返ってみてくださいね。

<取材・文/山内良子 イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>

特集[令和のスカッとした話

フリーライター。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意です

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