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“独自コロナ政策”で注目の福岡市長に直撃「なぜ日本は変化に対応できないのか」

ビジネス

法律は人間が作った決まりにすぎない

高島宗一郎・福岡市長

――確かに、コロナ禍では「そんなことすら、どうしてできないの?」と疑問を感じることばかりです。

高島:その「なぜ?」「どうして?」という疑問が、ものすごく大事なポイントなんですよ。国や行政は「法律で決まっているから、できません」とよく言いますが、だったら変えればいいだけのこと。

 法律は人間が作った決まりにすぎないなので、私は「法律でできない」と言われているものは、逆に「必ず変えることができるもの」だと思っています。

 実際に、福岡市ではスタートアップを支援すべく、国家戦略特区の枠組みを活用して、さまざまな規制緩和を勝ち取ってきました。ゼロリスクを求める日本では、新しいチャレンジが受け入れられるには非常に高いハードルがあります。

 しかし、「なぜ?」という疑問を突き詰めていくと、実は、できない理由としてあげられていることのほとんどが、大した問題でないことが少なくないんです。

成功事例を可視化すれば…

高島:従って、まずは特定のエリアで新しいチャレンジを行い、その成功事例を可視化していけば、他のエリアでも成功事例を簡単にコピペすることができ、その結果、国全体が良い方向にスピーディーに変わっていく。それが私の持論です。

 現在進めているワクチン接種でも、福岡市は独自の優先接種枠を導入しました。集団接種会場の時間を夜10時まで延長し、高齢者の接種と並行して、介護従事者や保育士、教職員への優先接種を行っています。

 これは河野太郎新型コロナウイルスワクチン接種推進担当大臣に「国が目標とする7月までの高齢者への接種完了は必ず達成するので、それに加えて独自の優先接種を行っても良いか」と尋ね、「問題ない」と言われたので、実行したものです。他の自治体から「そんなことできるんですね」「どうやって、できることになったんですか?」と問い合わせがたくさん来ています。

 同じことを全国で一気にやろうとすると、自治体によって人口の規模も、医師会との協力体制も異なるので難しいかもしれませんが、1つ成功事例があれば、他の多くの自治体が一歩を踏み出す大きな後押しになるはずです。

<取材・文/中野龍 写真提供/福岡市>

【高島宗一郎】
福岡市市長。1974年生まれ。大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。2014年、2018年といずれも史上最多得票で再選し現在3期目。2014年3月、国家戦略特区(スタートアップ特区)を獲得、スタートアップビザをはじめとする規制緩和や制度改革を実現するなど、数々の施策とムーブメントを実施

1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

福岡市長高島宗一郎の日本を最速で変える方法

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コロナで浮き上がってきた様々な日本の課題へ立ち向かうため、地方自治体という“現場"で10年に渡って改革の旗を振るってきた筆者が、地方行政の実績をベースに日本を最速で変える方法を解き明かす

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