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日本の借金が1212兆円を突破。国民1人あたり借金983万円でも破綻しないのはなぜか

コラム

 膨らみ続ける社会保障費、そして新型コロナウイルス対応……。日本の借金は今過去最大を更新中だ

 世界でも突出して高いといわれる日本の借金。このままで国の財政は破綻しないのだろうか? 増え続ける借金はいったい誰が返すのだろうか? 経済アナリストの森永康平氏とともに、データとお金の知識で日本の今を考えてみよう。

札束

画像はイメージです

※本記事は書籍『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)の一部再編集したものです

日本の借金は「1212兆4680億円」

 テレビや新聞で「国の借金(国債、借入金、政府短期証券を合計)が2020年12月末時点で1212兆4680億円となり、過去最大を更新。2020年8月1日時点の総人口が1億2333万人なので、国民1人当たり約983万円の借金を抱えている計算になる」などという話はよく目にします。

 ただこの表現、計算上は間違ってはいませんが、少し不思議に思わないでしょうか? 商業高校を出ている方や、会社の経理部で働いている方、自営業やフリーランスの方で自分で帳簿をつけている方は特に強い違和感を覚えるかと思います。

 違和感を覚えない人のために、ちょっと会計の話をしましょう。お金の流れを簿記の知識をもとに記帳していく場合、必ず次のルールに従って仕訳をしていきます。

会計の考え方にもとづいて国の借金を考える

借入金

AさんがBさんから100円を借りてきた図(筆者作成)

 たとえば、AさんがBさんから100円を借りてきた場合、借入金という負債が100円増えるので貸方に100円が記入されますが、一方で口座にお金が振り込まれて預金という資産も100円増えるので、借方にも100円が記入されます。

預金100円/借入金100円

 借りた側(Aさん)はこのように仕訳をします。これをBさん、つまり貸す側から見れば、貸し出したことで将来返済される貸付金という資産が発生し、一方で預金という資産が減りますから次のように仕訳をすることができます。

貸付金100円/預金100円

「急に簿記の話をしてどうしたんだ?」と思われるかもしれませんが、このような複式簿記という会計の考え方にもとづけば、誰かに資産が発生したら、どこかで負債が発生しているはずという当然のことに気付くのです。

 それでは、「国の借金が」と国の負債の話をするのであれば、その一方で誰かの資産の話も出ないとおかしいと思いませんか? かなりかみ砕いていうならば、AさんがBさんから100円でアメを買ったら、Aさんはお財布から100円が減りますが、Bさんはお財布に100円が増えるとなります。当然ですよね。

誰も教えてくれないお金と経済のしくみ

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