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『こち亀』両津勘吉のビジネスセンスは現実でも通用するか

ビジネス

両津勘吉のビジネスセンスに学ぶ

『こち亀』の定番といえるストーリーに、両津勘吉がビジネスプランを思いつき、それを実行するというものがある。たいていは失敗に終わるのだが、そこには現実世界でも応用可能なヒントがあるという。

「両津のビジネスに通用する特徴としては『時流を素早く汲み取り、その時点での最先端技術を活用する』『競合のいないブルーオーシャンを狙う』『ビジネスモデルごと発明する』『マーケティングやブランディングを疎かにしない』といったところがあります」

 さらに、特に印象に残っているビジネスプランを披露する回として、稲田氏は87年16号「列車よいとこの巻」(54巻)のアイデア列車を挙げる

「国鉄民営化のタイミングで発表された同編では、旧国鉄の郊外路線を両津の部下・中川の会社が買い取って管理することになりますが、両津は郊外から通勤してくるサラリーマンを相手に、車両で麻雀教室、ゴルフ教室、赤ちょうちん屋台、クリーニング、銭湯、理容室を開業してカネを落とさせろと提案します。

 特にゴルフ教室については、列車外へ打ちっぱなしする際に沿線の土地を買いとっておく、というアイデアを出して担当者を驚かせました。当時はバブル景気の初期で、企業の業績は絶好調。中川財閥の財力があれば、郊外沿線の土地を買うことなど造作ない……という世相の反映も見え隠れする秀逸回です」

20代が学ぶべき「両津の失敗」の本質

亀有駅

こちらは実在する亀有駅南口交番

 こうした柔軟性あるビジネスプランのアイデアは、当然そのまま真似できるものではない。では、20代ビジネスマンが両津勘吉の行動を参考にする時、どういった部分に着目したら良いのだろうか。

 稲田氏は大きく2つのポイントを挙げる。まず1つ目は、ズバリ「両津の失敗」だ

「両津はたびたび、うまくいきかけた事業を盛大に失敗させますが、それらの多くはジェームズ・C・コリンズの著書『ビジョナリー・カンパニー3──衰退の五段階』(日経BP刊)で提示されている『衰退の五段階』を綺麗になぞっています。

 すなわち、成功から生まれる傲慢(第1段階)、規律なき拡大路線(第2段階)、リスクと問題の否認(第3段階)、一発逆転策の追求(第4段階)、屈服と凡庸な企業への転落か消滅(第5段階)。これを頭に置いて『こち亀』のビジネス(失敗)回を読むと、両津の反面教師ぶりに学ばされることがとても多いでしょう」

『こち亀』社会論-超一級の文化史料を読み解く

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