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窃盗で少年院に…25歳の営業マンが語る「社会復帰できたわけ」

学び

新たな人生を進むために必要なこと

――今は、婚約者もいて、お子さんもいるとのことですが、ここまで来るのに必要なことって何だったと思いますか?

:1つは悪さをしていたときの人間関係を断ち切ったことでしょうか。クラージュに新しく来る人にも「元の人間関係を絶ってここに来る覚悟があるのか」と聞いているのですが、必要なことだと思います。

 もうひとつは無条件に受け入れてくれるような居場所でしょうか。クラージュに来てよかったのは職員さんや先輩、仲間が本当に優しいということです。また暴力が一切ないということもよかった。もともと僕はとび職をしていたこともあるんですが、そこは暴力でねじ伏せる理不尽な世界だった。

 ここでは理不尽なことはまったくありませんし、つらいことがあっても相談に乗ってくれる人がいる。だから20歳からクラージュに入り、紹介してもらった仕事を5年たった今も続けていられるんだと思います。

――今後の抱負は?

:実はつい先日、婚約者と披露宴を挙げたんです。まだ、籍は入れていませんけど、彼女のお腹の中には子供もいて、今後どんどんお金がかかってくるので、家族のために仕事を頑張りたいですね。あとは、クラージュには同じような境遇の後輩が入ってくるので、彼らの指針になるような先輩になりたいと思っています。

受刑者専用求人誌の編集長に話を聞く

chance

受刑者専用の求人誌『Chance!!』

 現在では人生をやり直し、家庭をもった堤さん。ですが、実際には社会復帰がなかなかうまくいかないケースも多いようです。受刑者専用の求人誌『Chance!!』の運営や、非行、犯罪を犯した人たちへの採用支援・教育支援事業を営む株式会社ヒューマン・コメディ代表の三宅晶子さんに話を聞きました。

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――『Chance!!』には事業に協力する企業からの求人が掲載されていて、手紙を出せば受刑中に一般面会で面接を受けることも可能だそうですが、元受刑者の社会復帰の実情は?

三宅晶子(以下、三宅):本人に罪と向き合う気持ちがあってもなかなか難しいのが現状です。部屋を借りれらなくなるかもしれませんし、親御さんが受け入れなければ、非行少年でも居場所がなくなることもあります。なかなか居場所がない。本人自身の問題もありますが10人紹介した中で2~3人が社会復帰するかどうか、というところです。

 また、世間の人々が犯罪を犯した人をまったく別世界の人のように考えているのも問題でしょう。人生には何があるかわかりません。自分も当事者になる可能性はあるはずなんですが、「自分には関係ない」と思っていて、多くの人がネットなどで叩きつるし上げる状況が起きています。

――一度道を外れた人がやり直すために必要なことは何なのでしょうか?

三宅:社会復帰が難しいことの一つは過去は過去として失敗や間違いを許し受け入れる場が少ないということだと思うのです。普通にやり直そうと思えば、どこかで必ず嘘をつかなくてはいけなくなる。誰にも本当のことを言えないというのは孤独感となって、罪を繰り返すことにもつながります。

 そうではなくて、罪を犯した人が自分のことを包み隠さず話しても受け入れられる場所を作っていくことが必要だと思います。

<取材・文・撮影/小林たかし>

フリーランスのライター、主にweb媒体を中心に様々な分野で執筆を手掛ける。守備範囲は広いがとりわけ、変なもの、ことに関する興味が強い。最近の目標はヘビトンボを食べてみること。

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