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個人情報で“お金”が生まれる?話題の「情報銀行」とは

ガジェット

 現在、特にインターネット上で展開されるビジネスの多くは「個人情報」によって成り立っている。

 ユーザーが、便利なツールやサービスを利用する際、その対価として自分自身に関連する様々な情報を提供するような構造だ。一見無料に見えるが、その裏には、常に「情報」というコストが発生している。いわば「情報」が通貨のような役割を果たしているわけだ。

情報

※画像はイメージです(以下同じ)

 その「情報」を、まさに現実の通貨のような形でやり取りしようという動きが、日本で始まろうとしている。それが「情報銀行」だ。「情報銀行」は、日本IT団体連盟と総務省が共同で指針を策定しており、当然ながら個人情報保護法などのルールに則った形になっている。

ソフトバンク、スカパー…動き出す「情報銀行」

 具体的な動きとして、スカパーJSATが、7月から視聴履歴や好きなスポーツチームなどに関する「情報」を、提携先の外部企業へ提供することに同意した視聴者の視聴料を割り引くことを発表したが、これも「情報銀行」の枠組みが利用されている。

 そのほか、みずほ銀行とソフトバンクが設立した個人融資サービスを展開している「Jスコア」なども、AIによってスコア化される個人の信用情報を、外部に提供することに同意すれば、それが現金、もしくは電子マネーの提供、あるいは金利引き下げという形で還元される。

 外部企業に提供された個人情報は、さまざまな形で、その企業の営業やマーケティング活動などに活用されることになる。例えば、情報提供に同意した顧客に対して、ピンポイントで広告を配信するというようなことに用いられるだろう。他にも、集めた個人情報を元に、新たな商品やサービスを開発する企業も出てくるかもしれない。消費者の個人情報は、企業にとって、非常に重要なビジネス情報でもあるのだ。

 個人情報が、企業のビジネスに活用され、また、提供した個人に対しても、その見返りがきちんと得られる仕組みは、これまでも、さまざまな形で見られている。例えばコンビニで買い物をする時などに、よく聞かれる「Tカード」などは最たる例だ。

 あれも、消費者が個人情報を提供する代わりに、その対価が得られる仕組みとして知られているが、実は情報銀行は、これらの仕組みと大きく異なる点がある。

利用者が情報提供の可否を選択できる

銀行

 情報銀行が、これらのポイントサービスと大きく異なるのは、利用者が、外部提供先企業などへの情報提供の可否を選択することができる点だ。つまり、決まった枠組みを利用した企業が、消費者から預かった情報を、その消費者の同意する範囲で(外部企業への提供という形で)運用し、そこから得られた利益やメリットを、直接、または間接的に消費者に還元する仕組みとなる。

 こういった「データの預かり」→「データの運用」→「利益還元」といった情報の流れを「預金」→「運用」→「利息(配当)」といった、銀行のおカネの流れになぞらえたのが、情報銀行だ。

 情報銀行という仕組みは日本独自のものだ。米国では、例えばGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com の4社の頭文字をつないだ造語)をはじめとした企業が、消費者から個人情報を収集することで利便性の高いサービスを提供しているが、(サービスの利便性以外の)対価は、基本的に還元されることはない。

GAFAに対抗できる可能性を持つ仕組み

 また、自分が提供した個人情報が、どこに、どう活用されているかを、消費者が自らの手で把握する術もない。実際、2018年3月に、英国企業が、Facebookの持つ個人情報を政治的に利用していたことが発覚した事件は、記憶に新しい。

 情報銀行は、その点、消費者に、自らの情報の流れを把握できる環境を提供し、かつ提供された情報に対する対価がもたらされるという点で、世界的にも独自性が高く、全く新しい試みだ。

 現在、日本は米国や中国のように、消費者個人の持つ情報を、ビジネス上有効に活用する動きが、あまり盛んに行われてはこなかった。だが、情報銀行の普及をきっかけに「情報」を上手く活用した、新しいビジネスが数多く生まれてくる可能性がある。

 情報銀行は、データ活用に出遅れた日本企業が、GAFAに対抗できる可能性を持つ新しい仕組みでもあるのだ。

<TEXT/熊村剛輔>

プロサックス奏者からIT業界に転身し、エンジニアやオンライン媒体編集長などを経たのち、主に外資企業でデジタルマーケティングに携わる。10年以上前からソーシャルメディアに深く関わり、黎明期のソーシャルメディアマーケティングをリード。現在はクラウドサービスベンダーで、エバンジェリストとして、デジタルマーケティングや、そのテクノロジーの普及活動を行うかたわら、ミュージシャン、ライターとしても活動中

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