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大手企業の学歴フィルターを攻略した就活生の“たったひとつ”の強み

学び

B君に備わっていた「他人を巻き込む力」

 それでも、B君の強みは、「他人を巻き込む力」に長けていることでした。

 就職活動の相談中でも、「また夢みたいなことを……」と思うような非現実的な話が何度も出てきたのですが、B君のひたむきな行動とまっすぐな思いに、私を含む学校側(就職課)が「なんとかしてあげたい」という気持ちにさせられていきました。

 B君は「仲間と武器」という自分の“資源”を活用する能力に秀でていて「処理可能感」が人一倍、高かったのです。

 就職活動に限らず、社会生活においては普段から使える「仲間と武器」を増やしておき、何かあった時に引き出して活用することが重要なことになってきます。

 高い処理可能感を支える「他人を巻き込んでいく力」や「他人の力を借りる力」を持つB君は、加えて自分のやりたい仕事に就くために挑戦し続ける、という高い「有意味感」も持ち合わせていました。私たちに「なんとかしてあげたい」と思わせたのは、B君の有意味感も大きく関係していたといえるでしょう。

周囲を巻き込めば、チャンスはつかめる

舟木彩乃

舟木彩乃さん

 B君は、大学の就職課やボランティア活動でつながった人脈を含むさまざまな人脈を使って、手広くアジア進出をしている大手企業が非公開で新卒採用をしていることを知り、結果的にこの企業に入社することができました。

 この企業は、海外での展開に力を入れていたため、現地採用は積極的にしていましたが、日本での新卒採用は大々的にやっていませんでした。それでも同社の社長はB君との面接で、B君であればいずれ海外に行ってもきっとうまくやってくれるだろうと、その場で採用を決めたそうです。

 就職活動では、学歴が高いことで挑戦するチャンスが増えるというのも事実です。

 しかし、B君のように、大学の就職課やボランティア仲間などの“資源”をうまく使って、1人だけで悩まずに周囲を巻き込んでいけば、つかめるチャンスは必ず増えます。私たち人間は1人で頑張ることに限界があり、B君はそのことを理解していたのだといえます。

<TEXT/舟木彩乃 構成/井野祐真>

ストレス・マネジメント研究者。千葉県出身。10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上、コンサルタントとして100社を超える企業の相談に対応。一般企業の人事部や国会議員秘書などを経て、2015年に筑波大学大学院に入学し、17年に修士課程修了。現在、ヒューマン・ケア科学専攻(3年制博士課程)に在籍。研究の一環として、産業や医療の現場でカウンセリングを行なうAI・ロボットの開発にも参加している

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