レトルトカレーは関西発!世界一のロングセラー商品を生んだ企業は?【実は日本が世界初】

日常的に親しまれるサービスや商品が日本で初めて生まれたという物語を紹介する連載企画。今回は、月に1回、あるいは数カ月に1回くらいは買っている人が多いとされるレトルトカレーの世界を掘り下げます。
ギネス世界記録にも認定

忙しいビジネスパーソンであれば、仕事の後に家に帰ってレトルト食品で食事を済ませるという人も多いと思います。レトルト食品のレトルトとは英単語の「retort」が語源です。
調理済みの食品を耐熱・耐圧性の容器に入れて密封し、高圧高温で殺菌する際に使う加熱容器を英語で「レトルト(retort)」と言うそう。
その高圧高温で殺菌した容器入りの食品を日本では「レトルト食品」と呼ぶようになりました。
このレトルト食品の中でも、金属箔とプラスチックフィルムを積み重ねて層にした小袋入りのレトルトカレーは、市販用として世界で初めて日本で商品化されたとご存じでしょうか。
市販化された年は1968年(昭和43年)。最初は関西(阪神地区)で、翌年から全国的に販売されると、その味と利便性が次第に評価され、ロングセラー商品として歩みを始めます。
現に、その偉業は、ギネス世界記録に「Longest-selling retort-pouch curry brand(最も長く販売されているレトルトカレーブランド)」と今も認められているほど。
その世界最長の歴史を誇るレトルトカレーブランドは大塚食品(本社:大阪市)の〈ボンカレー〉です。
株式会社マクロミルと二松学舎大学の調査によると、過去1年以内に食べたレトルトカレーブランドとして、ボンカレーは2位につけています(1位は、ハウス食品の咖喱屋カレー)。世界最長にして、いまだに愛されているのですね。
世界初の一般向け市販レトルトカレー

ボンカレーの歴史は、一般社団法人日本食品包装協会の情報にも詳しいです。
もともと、ボンカレーの発売より9年も前に、アメリカ軍が軍用食としてレトルト食品を開発したところから歴史が始まるみたいです。言い換えると、レトルト食品そのものは米国で生まれました。
ただ、レトルト食品の中でもレトルトカレーを世界で初めて市販化して成功させた企業は日本の会社、大塚食品工業(現・大塚食品)でした。
同社はまず、一般向けの市販品として阪神地区限定で1個80円でリリースします。ただ、最初のレトルトカレーは賞味期限が夏は2カ月、冬は3カ月と短く、容器が突然破裂するリスクもあり、不完全な要素が多かったといいます。
そこで同社は、空気と光の遮断機能を向上させ、賞味期限を2年に伸ばした改良版を1969年(昭和44年)4月に全国発売しました。
その背景には、カレー粉やカレー缶が普及し、メーカー間の競争が激しくなっていく中で、何か違った商品をつくりたい、今までにないカレーをつくりたいという動機が企業の側にあったとか。
最初は、初めて見るレトルトパウチ食品に市場も戸惑いを見せたようです。しかし、
“一人前入りで、お湯で温めるだけで食べられるカレー、誰でも失敗しないカレー”(大塚食品のホームページより引用)
というコンセプトが徐々に市場に浸透し始め、後の成功につながっていくのですね。
ちなみに、商品化にあたり、グループ会社の大塚化学は約2年の研究開発で、レトルト釜(加熱器)も包装材もない状態からレトルトパウチ食品の商品化にこぎつけたといいます。
その情熱と仕事ぶりを頭に入れた上で、レトルトパウチを開き、ボンカレーを口にしてみてはいかがでしょうか。
実は、世界で最初に一般市販化されたレトルトカレーなのだと思って食べればまた、その感動がスパイスになり、味わいも格別になるかもしれませんよ。
[文/坂本正敬]
[参考]
※ レトルト包材の開発の変遷(その1) – 日本食品包装協会
※ Longest-selling retort-pouch curry brand – Guinness Wolrd Records
※ 『ボンカレー』がギネス世界記録™認定!世界No.1ロングセラーブランド発売から55周年を迎える世界最長寿のレトルトカレー – 大塚食品
※ 国内における食品購買に関する実態調査-新型コロナ禍で伸長するレトルトカレー市場の動向を中心として-【調査報告書】 – 株式会社マクロミルと二松学舎大学