石破首相と主要政策【やさしいニュースワード解説】
在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「石破首相と主要政策」です。
少数与党での第2次石破内閣
2024年秋以降、日本の政治では大きな動きがありました。石破茂首相(67歳)の登場です。9月27日に行われた自民党の総裁選で衆議院議員の石破氏が新総裁に選出され、10月1日に内閣総理大臣に就任しました。石破氏はこれまで防衛大臣、農水大臣、自民党幹事長などを歴任したベテラン政治家です。
さらに首相就任直後に衆議院の解散・総選挙に踏み切り、有権者を驚かせました。選挙結果は現職閣僚や公明党の代表が落選するなど、自民、公明両党を合わせた議席数が215と過半数の233議席を下回る惨敗となり、少数与党に転落しました。
国会では石破氏が再び首相に選出され、11月11日に第2次石破内閣がスタートしましたが、与党だけでは重要な政策を決められないなど政権運営は不安定な状態となっています。このため野党にも協力を呼びかけ、適切に政策を推進できる体制を今後構築できるかどうかが問われます。
3つの柱で構成される経済対策
こうした中、石破首相が直面する課題は、内政はもちろん、外交・安全保障政策でも山積しています。2021年後半から続く物価上昇が国民生活を圧迫していることなどを受けて、経済面では11月下旬に事業規模39兆円の経済対策を打ち出しました。
新たな経済対策は「物価高の克服」「国民の安心・安全の確保」「日本経済・地方経済の成長」の3つの柱で構成され、物価対策では、2025年1月から3月にかけて電気・ガス代を支援するほか、住民税非課税世帯に3万円を給付し、子ども1人あたり2万円を加算するとしています。
また、年初の地震で大きな被害を受けた能登半島の復旧・復興の加速や、新たな地方経済振興策なども盛り込みました。経済対策の裏付けとして、総額13兆9,433億円の24年度補正予算が12月17日に国会で可決・成立しました。
このほか、アルバイトやパートの年収が103万円を超えると所得税が課税され始める、いわゆる「年収103万円の壁」についても、見直しに向けて調整が進められています。
トランプ次期大統領との信頼関係が日米関係のカギ
海外情勢に目を転じると、日本の近隣国である中国、ロシア、北朝鮮の動きが活発化しており、日本の安全保障上の大きな脅威になっています。ウクライナや中東情勢からも目を離せません。
こうした中、日本外交の主軸である米国との関係では、2025年1月20日にトランプ新大統領が就任します。石破首相は国会での所信表明演説で、トランプ次期大統領について「率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高めあうことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができる」と述べました。また「トランプ次期大統領とも率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げていきたい」とも言及しています。
12月下旬になって、石破首相は年明け1月中旬に訪米し、トランプ氏と会談する方向で調整していると報道されました。
再びホワイトハウスの主となるトランプ氏と石破首相が、信頼関係のもと安定した日米関係を構築できるかどうかは、今後の大きな課題となります。