人事部長の悩みは“使用されない”男女共同トイレ「女性の理解を得るのが難しい」
共同トイレ設置をアナウンスするのは…
しかし、「その社員の実名を出し、特定できる形で社内に伝えることが問題なのです」と、大津さんは語る。
「例えば、LGBT(レズビアン、女性同性愛者、ゲイ、男性同性愛者、バイセクシュアル、両性愛者、トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人の頭文字をとった言葉)の人がいるので、その対処のひとつとして共同トイレを設置したとアナウンスをすることは問題ではありません。
むしろ、こういう人がいることが社会的に認知されている以上、アナウンスは必要ではないか、と思います。今回のような問題が生じていながら、LGBTの対策を何らとることなく、放置しておくといじめやパワハラの一因となり、トラブルになることもありえます。例えば就業規則に記載したり、社員研修で取り上げることも必要だとは思います」
LGBTがブームに?誤った姿勢に警鐘も
筆者は、取材を通じてベンチャー企業や中小企業の中には最近、ある種のブームがあるかのように感じる。LGBTに取り組んできたわけでなく、明確な考えを持っているのでもないのに、「LGBTを理解します」などと進歩的な姿勢を装う企業が少しずつ増えている。ところが、社内事情を調べると、対策が取られているとは思えない。
この動きについて、大津さんに尋ねた。
「そのような形で多様性の象徴や進歩的な姿勢を装うようなことを、私は自らがコンサルティングに関わる企業には勧めることはできません。企業としてこの問題を本当に理解しているならばともかく、問題の本質や明確な考えや姿勢がないなか、自社の広報や採用などで安易に取り上げ、世の中にアピールするのは避けたほうがいいと思います。それはむしろ、差別を助長したり、間違ったメッセ―ジを世の中に、そしてLGBTの人に送ることになりうるかもしれません。LGBTである人はおそらく、ご自身の生き方、価値観と向かい合い、日々生きているのではないかと思います。こういう方に失礼にもなるのでないでしょうか」