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大学生の葛藤に寄り添う人気漫画家の思い「他人との差なんか気にしなくていい」

暮らし

願望を具現化したようなキャラクターも

全員くたばれ大学生

『全員くたばれ大学生3』(扶桑社)

――ほかに特に思い入れのあるシーンは?

サレンダー橋本:テスト前になると、教室の前のほうでノートを取っている真面目な生徒にノート借りに来る「ノートハンター」ですね。これは2代目の担当さん(和田)が、テスト前によくノートをコピーしに行っていたって話を聞いて描きました。

 大学留年して、当時絶対落とせない授業があったらしい和田さんが、教室の1番前に座っているイモ臭そうな男子にお菓子を貢いだり、コーヒーおごったりして、なんとかノートをコピーさせてもらったみたいで、酷いなと。そういう僕の知らない方面のネタ出しはいろいろとしてくれましたね。

――ちなみにヒロインの江口にモデルはいるんですか?

サレンダー橋本:こういう人がいたら良いなぁと思って、描いただけなので、特定のモデルはいません。気が強い性格で積極的に哲太に話しかけていたのは、僕が自分から話しかけずに、誰かが話しかけてくれたらなぁと大学時代に思っていたから。ある意味、願望を具現化したようなキャラクターですね。

つまらない言葉で自分を定義しないで

――前半と後半で若干タッチが違うのも見どころですよね。

サレンダー橋本:最初のほうは毎回、偉人や哲学者の名言・格言を引用して、それにそった作品作りをしたいと思っていたんですが、途中からは物語として面白くしたいという欲が出てきて、意図的と言うか、自然にああなっていきました。どちらかというと、キャラクターが勝手に動いてああなってくれた感じですね。

――漫画を通して伝えたい大学生へのメッセージをお願いします。

サレンダー橋本:大学や大学生がテーマの漫画ですが、具体的な読者層のイメージはありません。あるとすれば、学生時代の自分に向けて描いていたと思います。当時こういうものがあって、この漫画を読んでいたら、「こういう思いをしているのは僕1人じゃないんだ」って気が楽になったから。

 つくづくコロナで今の大学生は大変ですよね。同情します。そのうえ、今はTikTokやインスタグラムのSNSから、嫌でも他人のウワサや評判が目に入るわけじゃないですか。そんな他人との差なんか気にしなくていいと思うんですよ。リア充でも、非リア充でも、つまらない言葉で自分を定義しないで、ぜひ自分の定義を自分でつくろうという気持ちで、みなさん生き抜いていってもらいたいです。

<取材・文/bizSPA!取材班>

全員くたばれ! 大学生1

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