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DXに強い人材になるには?東大・松尾豊教授に聞く、“アナログ体質”を変える方法

ビジネス

新たなキーワード「ディープラーニング」

松尾豊さん

「自分はIT業界で働いていないから関係ない」とはならず、もはやどの職種でもDXに関する知識やスキルが求められている現代。その中でも、松尾さんは「ディープラーニング」の重要性を説きます

 ディープラーニングとは、AIのひとつの技術手法。深層のニューラルネットワークを用いて、コンピュータ機器やシステムが大量のデータを学習、人間が手を加えなくてもその特徴を自動的に見つけ出す技術です。 近年その技術進歩によりAIの急速な発展をもたらし、画像認識や音声認識、自然言語処理において大幅に性能を向上させたことで、様々な産業分野への導入・実用化が加速しています

「コロナ禍で施設入館者の体表温の測定が当たり前になっていますが、この測定において顔を認識する際にはディープラーニングによる画像認識の処理が行われています。製造業では外観検査や食品工場での食品の選別、農業では農薬を撒くドローンや収穫ロボット、水産業では養殖で魚が餌を食べているかどうか察知し、適切に餌やりするスマート給餌、エンタメ業界では漫画の自動翻訳や静止画のアニメーション化など、あらゆる業界で活用されている技術です」

 松尾さんによると、これからは企業がDX化の中でこのディープラーニングを導入して活用することが求められていくといいます。

 ディープラーニングによって顔、文字、画像などリアルタイムな状況をデータ化して活用、データを用いた予測の精度が上がる、自然言語生成や機械制御の自動化が可能になるので、あらゆるBtoBサービスもBtoCサービスも、業務が単純化し、新しい付加価値が発見できるそうです

会社のアナログ体質を変えるには…

松尾豊さん

 2021年7月には、河野太郎行政改革担当大臣が霞が関の全省庁に要請していた「ファックス廃止」が事実上断念されたことが話題になりました。日本では社会全体としてまだまだアナログからデジタルへ移行できていないことがうかがえます。

 企業においても「取引先への年賀状を手書きで書かされる」「紙で印刷した書類を郵送しないといけない」など、慣習や上司の都合などによって、若手会社員が時代遅れで非効率な業務をさせられている場面が多々あるでしょう。

 この点について松尾さんは、企業や上司世代に長らく続いた成功体験が染み付いてしまっている可能性を考察します。

今ではむしろ、その成功体験が企業に大きな影を落としていることに、なかなか気付けないのでしょう。また、社会全体の高齢化も大きな要因です。大企業になればなるほど変化を嫌い、社内独自の力関係や“出世コース”が存在し、本来あるべき組織の競争力や製品の付加価値の変化を議論する力が弱いと感じます」

 非効率で理不尽なアナログ仕事に疑問を持ったら、社内で変革を起こしたり、自分が活躍できる場所に転職したりすればいいわけですが、いずれもなかなか簡単にはいかないもの。そこで松尾さんは、勉強会などを組織して仲間を作ったり、理解してくれる上層部の人を見つけたりする方法をアドバイスします。

「他社や海外の事例などで説得材料を作っておき、『こうしたらもっとうちの会社がよくなると思います』と提案できればいいのではないでしょうか。経営陣や上層部の中にも危機感の強い方はいると思うので、その方に刺さる可能性は高いです。デジタルの技術視点で会社を変えたいなら、同じように考えている若くて手が動く仲間を集めること。そして、常にそういったアンテナを張っておくことが大事だと思います」

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