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なぜ出汁の味が東西でちがう?関西と関東「食文化の常識」3選

コラム

 日本の二大勢力といっても過言ではない「関東」と「関西」。コロナ禍により、依然として県をまたぐ往来がしにくい状態が続いているが、引越し先で、はたまた出張先で、「あれ?」と疑問に思ったことはないだろうか。

味噌汁

※画像はイメージです(以下同じ)

 今回は、関西と関東の「常識」の違いを集め紹介する『最新版 関西人の常識VS関東人の常識』(河出書房新社)より、「食の文化」について一部抜粋してお届けする。「そういえばなぜ……」というものから、「そもそも違うことを知らなかった!」というものまで、知っていると少し自慢できるかもしれない。

出汁の味が東西で異なるのはなぜ?

 関東と関西では料理の味が違うと、よくいわれる。関東の味付けは濃くて、関西では薄い。特にうどんやそばでは、東京のそれは辛くて飲みにくい、と苦手意識を持つ関西人も多い。味付けの違いについては、醬油の好みや野菜の味の違いといった原因が絡み合っているが、その根底には出汁の違いもあるという。

 食材を煮て、うま味成分を溶け込ませる出汁は日本料理の基礎である。その種類は地域によってさまざまで、なかでも人気なのがカツオ節と昆布である。関東ではカツオ節でとった出汁が好まれ、関西は昆布で出汁をとる傾向が強い。東京の味付けは濃くて大阪は薄いといわれるのも、こうした出汁の違いが大きいとされている。

 出汁の好みがなぜ東西で違うのかというと、まずは流通の関係だ。江戸時代の海産物は大坂にいったん集まるので、現地で昆布を入手しやすかった。だが関東ではすぐに昆布が到着しないので、入手しやすいカツオ節が好まれたという。

味が違うのは「水」のせい!?

書籍

『最新版 関西人の常識VS関東人の常識』(河出書房新社)

 もうひとつの理由は水の性質だ。関東の水は大部分が硬水。つまりはミネラル分を多く含む水である。関東地方は火山灰土が積み重なったローム層という地層であるため、地下水にミネラルが溶け込みやすいのだ。

 一方、関西の地層は軟らかい粘土質なので、水は軟水だ。こうした水質の違いは農業などに大きく影響したが、出汁の好みまで左右することになった。

 なぜなら、関東の水質では昆布で出汁がとりにくい。先述したように硬水はミネラルが多いのだが、それだと浸透圧が高くなりすぎ、昆布のうま味成分であるグルタミン酸が溶けだしにくい。そのため関東では昆布出汁があまり広まらず、硬水でもうま味が出るカツオ節出汁が主流になったという。

 逆に関西の水はミネラル分が少ないので、浸透圧もちょうどよくなり昆布のうま味成分が溶けやすい。つまり、関東と関西で好まれる出汁が違うのは、江戸時代の環境と水の違いにあったというわけだ

最新版 関西人の常識VS関東人の常識

最新版 関西人の常識VS関東人の常識

ライフスタイル、食、言葉、風習…など、日々の暮らしの中にある西と東の「常識」の違いを紹介。知らなかった「暗黙の掟」に迫る!

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