『こち亀』両津勘吉のビジネスセンスは現実でも通用するか
『こち亀』が「エコとロハス」を受け入れた訳
2つ目は、ハイコンセプトかつ社会合理性の高い理念を、どのような方法をもって(『こち亀』が代弁するような)大衆(≒衆愚)に受け入れてもらうか――を考えた時のヒントが落ちているということ。
「たとえば、『こち亀』は、2000年代中盤頃より“エコ”や“ロハス”を取り上げて、『うさんくさいもの』『企業が善人ヅラして自分たちを騙そうとする際のバズワード』として、不信感を露わにしていました。ところがある時期から、『テクノロジーに対する興味』を媒介にして、エコを受け入れ始めるのです。エコの権化たる電気自動車について両津は、『エコだから』ではなく『技術上の先進性がすごいから』という理由で興味を惹かれます。
ARゴーグルを通じてゴミ拾いをしたり、かつて日本にあったトロリーバス(架線で電気を供給する電気動力のバス)を復活させて街全体を電化させる――という試みを実現したり。ここにおいて両津は『地球環境に優しいから』ではなく、『おもしろそうだから』という動機で、エコに意欲的をもって取り組みました。エコに頑なだった最初の頃の両津からすると、信じられないほどの態度変化です」
ビジネスの現場において、態度を硬化させている人間にどうしたら話を聞いてもらえるのか。どう説得すればいいのか。そのヒントが『こち亀』にはゴロゴロ落ちているのだ。
『こち亀』は基本的に一話完結。これを機に、読まず嫌いにするのではなく、まずは気になった回から手にとってみてはどうだろうか。
<TEXT/bizSPA!取材班>