伝説のサブカル誌が復活。50代編集長が「会社を辞めてまで」実らせた執念
体が動くうちにやりたい仕事に専念したい
今の年金制度だと、退職してからも何年かは働かなくてはいけないのに、すでにこんなに体がボロボロで大丈夫なのか……。脳裏をよぎったのが、2003年に初期の腎臓ガンが見つかった時のこと。
「ヤバい、死ぬ前に一番作りたいものを作っておかないと」と感じ、創刊したのが『ワンダーJAPAN』でした。
しかし左腎全摘出後は転移もなく、抗がん剤投与もなかったので、いつも通りの日常が戻ったら、いつの間にか本当にやりたかったことを忘れてしまってました。
やりたい仕事とは、もちろん『ワンダーJAPAN』の続刊を出すこと。《異空間》をテーマとした一風変わった旅の提案と、日本のもうひとつの顔を記録し続けるという2点で専門性を確立しているわけで、これをライフワークとしないでどうするのかと。
体が動くうちにやりたい仕事に専念すれば、ストレスも減り、体もリカバリーされるはずと考え、退職を決意したのです。
会社にいる必要がなくなった
退職した理由はまだあります。それは、DTPソフト(出版物を編集するソフト)の定番、Adobeの「InDesign」が一通り使えるという点です。2000年頃から15年ほど書籍編集部に在籍してたのですが、わりと早くからDTPソフトを独学でいじってました。
コミック本だと、画像とネームの配置さえできればいいので、ピョコタンさんや辛酸なめ子さんの単行本だったかな、本文は自分で組んでいますね。当時主流のDTPソフトは「QuarkXPress」でしたけど、直感的に理解できて使いやすい「InDesign」が登場してからは、すぐにそちらに飛びついたのを覚えています。
カメラの性能が飛躍的に向上したので、あとは文章さえ用意できれば、「InDesign」で本が1冊まるまる自分ひとりで作れてしまう世の中(そんなに凝ったことをしなければ)。
EPUB編集やPDF形式で出力する機能を使えば、電子書籍版も楽勝。翻訳すれば、海外向けに売ることも難しくないわけで、無理して会社にいる必要がなくなりました。今回の『ワンダーJAPON』でも、なんとか全ページ分、自分でレイアウトを組みました。