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韓国『パラサイト』だけじゃない。“悲惨な格差社会”を描いた注目の4作

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『家族を想うとき』(イギリス製作)

 カンヌ国際映画祭最高賞を獲得した『わたしは、ダニエル・ブレイク』をはじめ、一貫してイギリス労働者階級の実情を描いてきた、巨匠ケン・ローチ監督が、引退宣言を撤回して撮りあげた作品。

 テーマとなるのは、理不尽な労働システムの実態だ。日本と同様、社員としてではなく、個人事業主として会社と委託契約を結ぶというかたちの雇用形態が増えているのはイギリスも同じ。

 妻と二人の子どものいる、主人公である労働者階級の中年男性リッキーは、事業主として配達センターで働くことになるが、その仕事内容は厳しいノルマと責任が課せられる激務だった。

 会社専用の配送トラックを自費で用意しなければならないし、休んでシフトに穴をあければ罰金が取られ、配達中に事故を起こしたり怪我を負っても、何の保障もない。そんな悪条件で心身ともに疲弊するリッキーは、家ではずっと寝ているだけ。妻や子どもたちのケアをすることが全くできず、仲の良かった家族は少しずつ崩壊していく。

 アマゾンなどに代表される、購入者にとって便利な配送サービスが出現したことで、コストが増え業務が過酷になっている配送業界では、資本家が儲けをそのまま確保するために、労働者だけが一方的に負担を背負わされているケースがあるのだ。

 この搾取構造によって、幸せを奪われていく人がいるという実態があることを、ケン・ローチ監督は観客にうったえている。

『存在のない子供たち』(レバノン製作)

存在のない子供たち

『存在のない子供たち』¥5280 販売元: Happinet

『家族を想うとき』と同じく、貧困の実態を、3年にわたる取材を基に、物語のなかに凝縮。中東のスラム街に生きる子どもたちの苦しみを描いていく。同名の主人公を演じた少年・ゼイン君を含め、出演者たちの多くは、現地に住む人々。ゼイン君は推定12歳だが、栄養失調で歳よりも幼く見える。

 子沢山で貧しい一家に育ち、学校に通わず家計のために日銭を稼がされている主人公ゼインは、両親が出生届を出さなかった、“存在のない”子どもだ。ある日、仲の良い1歳下の妹が大家と強制的に結婚させられてしまったことで、絶望したゼインは家を出て街をさまようことになる。

 移民の女性を助け、彼女が働いている間に赤ん坊の面倒をみることで、日々を生き抜こうとするゼイン。子どもが子どもを育てる……スラムでは実際にある現実だ。

 教育を与えられず、まともな職につけない子どもたち。この貧困の連鎖は、『パラサイト 半地下の家族』とも共通する。貧困にあえぐ人々が浮かび上がれないことで、格差は固定化される。

 映画の最後に映し出される、ゼインの口から発せられる、胸を突かれるような訴えは、身勝手な両親や、貧困を生み出してきた無責任な大人たちの都合で翻弄される、不幸な子どもたちの怒りを代表したものだ。

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