「面白ければ何を撮ってもいい。それがキャノンボール魂の原点」――大森靖子×岩淵弘樹<劇場版アイドルキャノンボール2017対談>
「ドキュメンタリーの基礎が凝縮」キャノンボールルール
大森:周りは名だたるAV監督ばかり。憧れの松尾さんとも同じ土俵で勝負しないといけなくなったと。
岩淵:そうそう。でも、そういう状況にあって、じゃあ自分がいきなり肩を並べられるかというと、どうあがいても“にせキャノン”なわけでしょ。だから、今まではとにかく表現者としての自分を前に出そうと焦っていたけど、最初から”にせキャノン”であることによって、憑き物が取れて、素直にアイドルに向き合おうという気持ちになれたんだ。
大森:私のときは、罵声を浴びせてきたのに!
岩淵:それが、キャノンボールのルールって良くできていて、撮影者が被写体との距離を縮めていかないとポイントを獲得できない。つまり撮影者は被写体との距離感を常に意識しておく必要があって、ドキュメンタリーの基礎が凝縮されたルールでもあるんだよね。だから、今回の撮影を通じて、自分自身すごく学ぶことが多かったし、改めてカンパニー松尾という宇宙の広大さを思い知ったよ。
松尾さんの「男としての情けなさと、とほほ感」
大森:そうかと思えば、カンパニーさんっていくつになっても男としての情けなさだったり、とほほ感をちゃんと見せてくれるし。
岩淵:AVで松尾さんがいきなりカレー食べてる自分を映したりね。俺、あのシーンがすごい好きでさ。
大森:岩淵君はよくジャンクフードを食べてる自分を撮ってるけど、あれってオマージュなんだ(笑)。でもね、カレーを食べてる松尾さんのように、今回、岩淵君も足掻いて、もがいて、どうしようもない自分を見せていたでしょ。
それで、逆説的に被写体であるアイドルたちがすごく輝いてみえた。「私もあのとき、あんな風に撮って欲しかったな」って、映画を観ながらめちゃくちゃ嫉妬したんだからね!
――近日公開の後編では『劇場版アイドルキャノンボール2017』本編について、さらにディープなトークが展開!
<取材・文/宮下浩純 撮影/二宮ユーキ>