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会社員はフリーランスのように、フリーランスは会社員のように働くべし

学び
会社員はフリーランスのように、フリーランスは会社員のように働くべし

コロナ禍を境に、多くの20~30代が転職するようになったと感じています。2024年10月末に、厚生労働省が公表した調査によれば、2021年3月卒の就職者(大卒)のうち34.9%が3年以内に離職しているといいます。これは、過去15年で最も高い数値です。

就職して2〜3年というと職場や仕事に慣れてくる反面、「仕事がおもしろくない」「頑張っても評価されない」といった会社へのネガティブな考えも出てくる時期。現代の若手たちは「ネガティブな気持ちがあってもここで頑張ろう」と思うのではなく「それなら他の会社へ転職しよう」という気持ちが大きいのだと推測します。しかし、その気持ちもわかります。かくいう私も若手社員時代は、「なぜ上司たちは指示ばかりしてくるんだ」と不満を持っていたからです。

私の場合は、転職するのではなく会社員からフリーランスへ転身し、現在は経営者となりました。そんな私ですが、もし今、昔の自分にアドバイスできるなら「転職やフリーランスという環境に飛び込む前にできることはいろいろあるよ!」と伝えるでしょう。その「できること」のひとつが、今回紹介する「会社員はフリーランスのように、フリーランスは会社員のように働く」ことなのです。具体的にはいったいどういうことなのか、説明していきたいと思います。

まず会社員のメリットを理解しよう

その前にまず、会社員としての特徴をお話しておきたいと思います。それはなぜか。「指示されたことを行わなければならないのが会社員」と思っている方が多いかもしれませんが、実は会社員であることのメリットがたくさんあるからです。

例えば会社員は、経営者や上司から頼まれたことさえできていれば、給料がもらえて生活に困ることは基本的にありません。案件獲得は営業部、経理は経理部がやってくれます。労働基準法に守られ、平日の決められた時間に働き、土日はしっかり休めます。

「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思うかもしれませんが、では「自由に働ける」イメージの強いフリーランスではどうでしょう。

確かに会社に拘束される会社員とは違い、場所や時間に縛られず、働いたら働いた分だけ報酬として評価してもらえます。

しかし実際、それを叶えるのは簡単ではありません。フリーランスは自由に働ける一方で、仕事の獲得から、サービス提供、経理、納税、事務、アフターフォローといった仕事の全プロセスを一人で担います。お客様が成果に満足しなければ、仕事の依頼がこなくなり収入は激減。

そのため、常にお客様のことを考え、自身が持つスキルに加えて営業や経理、経営、接客など事業に関わるさまざまなスキルを身に付けなければ、生活は成り立ちません。

3月になれば確定申告も行わなければなりません。多くのスキルが必要となるのは間違いないのです。

会社員という環境が当たり前すぎて、メリットと感じていない人も多いもの。まずは会社員には多くのメリットがあることを理解しておきましょう。

会社員がフリーランスの意識を持つ効果

その上で、「会社員がフリーランスのように働く」のがなぜ大事なのか。端的に言えば「会社から重宝される人材になるから」です。

例えば、入社3年目のAさんの場合で考えてみましょう。「フリーランスのように」というのは、すなわち「上司や自分の業務だけでなく、お客様や他部署がスムーズに業務を行いやすいように意識してみる」ことです。

すると、こんなことに気づくはずです。

「今担当している仕事は、隣の部署でお客様とこういうやりとりがあったのか。じゃあ、ここに気をつけて制作したほうが、もっとお客様に喜んでもらえそうだな」

「あれ? お客様から、こんなリクエストもされていたのか。言われた通りに資料を作ってできた気になっていたが、実は裏で先輩が手直ししてくれていたんだ……」

「ずっと営業の仕事だけやってきたけれど、経理の仕事をして会社全体のお金の流れを把握してみたい」

これは「視野が広がったことで気づいた新たな世界」ともいうことができます。仕事や会社の全体像をもっと広い視野で見れば、できることや挑戦したいことが新たに増えて自分の可能性もグッと広がるでしょう。さらに意識を変えることで、同じように視座が高い人と関わる機会も増えます。その人たちから得た情報や知識はさらなる成長につながっていくのです。いいことずくめだと感じませんか?

フリーランスも会社員の意識を持つことで変われる

会社員メインで話を進めてきましたが、逆にフリーランスも会社員のような働き方を意識することで、仕事のレベルアップをはかれます。なぜなら、フリーランスとして付き合う取引先は、そのほとんどが企業や会社員だからです。いうなれば会社員としての業務の流れやシステムがわかっていれば、「このフリーランスとだと仕事がしやすいな」と思ってくれるはずです。

例えば、コアタイムにメールを送ったり、土日には依頼をしたりしない。さらに言えば金曜日には「お返事は週明けで結構です」と一言添える。つまりは一般的な会社員のワークスタイル、環境(何かを決めるには上席の判断が必要など)を理解して物事を進める、ということです。

残念ながらフリーランスになると、考えや生活まで自由になってしまう方が多く、このような基本的な概念が抜けてしまうと感じています。逆にこのあたりをしっかりと守っておくと、「仕事が途切れないフリーランスになる」はずです。

ちなみに会社員とフリーランス両方の経験がある身として、フリーランスが会社員と同じ生活サイクルで働けたら理想的だと思っています。もちろん自由に働けるのはフリーランスの特権ですし、正直な話、人が寝ている時間、休んでいる日まで働けば大抵のことは結果が出せます。ですが、無理をして体を壊していい仕事ができなくなれば、当然収入に響いてきます。

私は、フリーのPMOとして企業のプロジェクトに半年〜1年ほど関わることも多く、これまでまさに「会社員のように働くフリーランス」をしてきました。平日昼はしっかり働き、夜は趣味や学びの時間にあてて、土日は家族とゆっくり過ごす。健康面やパフォーマンスの質を考えても、今の働き方がとてもよいと感じています。

自分とは違う働き方を意識してみる

「会社員はフリーランスのように、フリーランスは会社員のように働く」とはどういうことなのか、どのような効果があるのかお伝えしました。

現状に不満がある場合、まずは今の働き方のメリットをよく理解した上で、自分とは違う働き方を意識してみるとより効果的です。

例えば会社員なら「少しくらい失敗しても路頭に迷うことはない」と考えれば、多少思い切ったチャレンジもできるでしょう。気づいていない人が多いですが、どんなに若手でも自分から動けば、新しい業務を担当できたり、部署を異動できたりするチャンスが多いのは会社員ならではのメリットです。

フリーランスは生活があるので、あまり思い切ったことはできないかもしれませんが、ベースが自由なので、いろいろな働き方を柔軟に試行できます。さまざまな職業に対する理解が深まれば、仕事の幅はさらに拡大するでしょう。

会社員、フリーランス、どちらが向いているかは人により異なります。視野を広げるだけでなく、自分にマッチした働き方を見つけられるのも、お互いの意識を持ってみる利点ではないかと思います。意識を持つだけなら、今日からでもできるはずです。ぜひ試してみてください。

[参考]
新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

株式会社office Root(オフィスルート)代表取締役社長
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動すると多数プロジェクトを成功へ導き、企業との協業も増加。2020年に法人化し企業課題と向き合う日々。
【著書】〈DX時代の最強PMOになる方法〉(‎ビジネス教育出版社)
URL: https://www.office-root.com/become-excellent-pmo/

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