投資の基本はリスク分散!新NISAの次におすすめする初心者向け分野【moomoo証券・伊澤フランシスコ代表取締役社長インタビュー】
長期間続く低金利政策により、預金をしてもお金が増えない昨今、政府も「貯蓄から投資へ」の政策を推進しており、新NISAなどの税制優遇制度によって、個人が投資を始めやすくなっています。
そこで、世界2,300万人以上のユーザーが利用する金融情報アプリ「moomoo(ムームー)」を提供するmoomoo証券の代表取締役社長・伊澤フランシスコ氏に、資産形成を始めるために必要な知識と心構え、初心者におすすめする新NISAの次の投資先、注意すべき危険な投資について聞きました。
日本は金融情報を得る環境に課題がある
――日本の若者の金融リテラシーは、世界の同世代と比べると高い、あるいは低いといえるのでしょうか?
伊澤:日本の若者の金融リテラシーについては、世界の同世代と比較して低めと感じています。その理由のひとつに、情報アクセスの差があります。アメリカやヨーロッパでは、金融に関する情報がインターネット上で多く提供されており、掲示板やコミュニティを通じた情報交換も盛んです。
しかし、日本では情報量が限られており、特にインターネット検索結果の多くがアフィリエイト記事に偏っているため、広告に近い内容になりがちです。このため、若者が興味を持って調べようとしても、情報を得にくい状況が続いています。お金や投資に興味を持つこと自体はどの国の若者も共通していますが、日本では特に情報を得る環境に課題があると考えています。
――日本では、人前でお金の話題を避ける傾向があることも影響しているかもしれません。では、世界の中で金融リテラシーが高い国としては、どこが挙げられるでしょうか?
伊澤:「アメリカが最もリテラシーが高い」とは一概に言えません。たとえば、シンガポールなどのアジアの国々も金融に対する理解が深いです。この背景には、国の文化や教育システム、経済状況などさまざまな要因が絡んでいます。シンガポールは金融の中心地で、多様な国籍の富裕層が住んでおり、金融リテラシーが高いと思います。また、欧米でも富裕層が多いところのリテラシーは高いでしょう。
――金融リテラシーが高い人たちは、具体的にどのように知識を得ているのでしょうか?
伊澤:アメリカでは、金融や投資に関する情報はテレビ番組などで身近に存在しています。たとえば元ヘッジファンドマネージャーのジム・クレイマー氏が投資情報番組『マッド・マネー』をホストしたり、ドナルド・トランプ氏もビジネスリアリティ番組『アプレンティス』の司会を務めたりしており、投資や成功する企業経営に関する情報が一般に浸透しているのです。金融情報があふれている環境下で、皆さん普段から投資や経済の基礎を体得しているので、最低限の知識レベルが高いと言えます。
信頼性の高い情報を得ることが重要
――すでにスタート地点、ベースとなる環境から違っているのですね。では、日本で金融について学ぶには、どのようにすればよいでしょうか?
伊澤:日本でも情報は増えてきています。例えば、専門サイトを利用したり、オンラインでの掲示板やコミュニティで情報交換をしたりして、信頼性の高い情報を得ることができます。
そこで重要となるのが、真に正確な情報を見極める目を持つことです。広告に偏った情報も多いため、情報の信ぴょう性を確認することが求められます。
――情報が氾濫している中で、どのサイトが信頼できるかを判断するのは難しいことだと思いますが、正確な情報を見極める力はどのように養うのが効果的なのでしょうか?
伊澤:情報の見極めについては、書籍を通じて知識を深めたり、国際的な基準を満たした企業が運営しているサイトなど、実際に信頼の積み重ねがあり、検証された情報を扱っているところに注目する方法もあります。多角的な視点で情報を分析することが鍵となるでしょう。
弊社も情報提供に力を入れていて、無料でダウンロードしていただけるアプリから、日本のニュースをリアルタイムでチェックできるのはもちろん、海外のニュースも自動翻訳により日本語で読むことが可能です。
有名実業家が大暴落で20億円損失した危険な投資
――新NISAの制度が2024年1月に始まり、今年からNISAを始めた人も多い中で、8月に日本株が大きく下落した際に、急激な価格変動を目の当たりにして不安を感じた人も多かったと思います。新NISAへの影響や知っておくべきことを教えてください。
伊澤:金融市場は常に変動しており、価格が上がったり下がったりするのは避けられないことです。短期的な市場の変動に動じることなく、長期的な視点を持つことが重要です。
――8月の大暴落で、有名な実業家が約20億円の損失を出したと報じられています。その方は、信用取引によって損失が大きくなったそうなのですが、信用取引について教えていただけますでしょうか。
伊澤:信用取引とは、基本的に資金を借りて投資を行うことを指します。日本株の場合、一般的に自分の保有資金の3倍まで投資することが可能です。例えば、100万円しか持っていない場合でも、300万円まで投資することができ、これがリターンを大きくする一方で、リスクも増大します。
信用取引では、一定の金額を超える価格下落が続いた場合、元の資金を大きく下回ることになり得ます。これが、この投資方法の危険性です。大きな利益を期待できる反面、資産を失うリスクが非常に高いので、経験を積んだ投資家でさえ、リスク管理を慎重に行うことが求められます。
一般の証券会社では、ある程度の資金を持ち、最低限の取引経験を持つ方でないと信用取引の口座開設は難しいです。弊社では、これら一定の条件を満たした投資家に対して、米国株の信用取引を今年中に始める予定です。
初心者がつみたてNISAの次に投資する先は?
――初心者がつみたてNISAの次に投資を始める場合、どのような点に注意すべきですか?
伊澤:つみたてNISAは、特に経験が浅い投資家に向いています。この制度の最大の魅力は、投資初心者でもリスクを抑えながら継続的に資産を形成できる点にあります。市場の上下動に惑わされることなく、長期的な視点で安定した資産運用が可能だからです。
その上で、次の段階として、近年注目されているAIや半導体関連株といった成長株への投資に挑戦してみるのもいいでしょう。ただし、重要なのはリスク分散です。金額の割合には気をつけましょう。リスクが高ければ高いほど、金額は少なくなければいけません。というのは、儲かる可能性も高い一方で、損をするリスクも高いからです。
例えば、5%上下する可能性がある商品Aと、10%上下する可能性がある商品Bの2つを比べると、Bのほうがリスクは2倍になります。したがって、AとBへの資産の振り分け方は、2対1にするといいと考えるのです。まずはリスクとのバランスを見ながら、分散投資を心がけましょう。
――やはり最初は資産の余裕部分から、たとえ少し減ってしまったとしても困らない範囲で始めることが肝心ですね。
伊澤:そうですね。つみたてNISAは20年間、退職金や年金のつもりで貯めていく。その一方で、積極的に資産を形成していきたい場合は、勉強しながら少額から始めて、成功を重ねるうちに金額を増やしていくというやり方をおすすめします。
さらに、積極的に学び続けることも大切です。投資に関連するニュースや市場の動向を常にチェックし、さまざまな情報源から知識を得ることで、より賢明な投資判断が可能になります。ひとりの専門家の意見に頼るだけでなく、複数の視点をもとに自分自身の判断基準を磨き、経験を積んでいくことが、成功する投資家への道です。
――若手ビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。
伊澤:若手ビジネスパーソンの皆さんには、リスクを恐れずチャレンジし続けてほしいと思います。投資にしても、50歳で始めるより20代、30代のうちに始めるほうが、この先まだ稼げる可能性が高いですし、やり直しがききますから。しっかりと学び、情報収集を怠らず、自分の知識を積み重ねていくことで、ご自身の人生を成功させていただきたいと願っています。