出張や異動は拒否できる!その場合の条件とは?【弁護士に聞く労働問題】
日々働いていると、職場でハラスメントやトラブル、不当な扱いなど、理不尽な問題に直面することは避けられないことかもしれません。そんなとき、自分一人で対処するのは難しいものです。専門家である弁護士に相談し、法律に基づいたアドバイスを受けることで、問題をスムーズに解決する手助けとなります。bizSPA!では、労働問題に関するよくある質問をピックアップして取り上げていきます。
今回は、「労働契約に明記されていない業務」について、アディーレ法律事務所の岩井直也弁護士に解説していただきました。
目次
Q1. 労働契約に明記されていない業務を命じられた場合、それを拒否する権利はありますか?
労働契約とは、一般に「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約」と定義されています。使用者である会社は、労働者に対して、労働契約に基づく指揮命令権を有しており、これをもとに労働者に労働を命じることができます。
もっとも、何でも命令することができるわけではなく、労働契約等(就業規則を含む)に根拠があることや当該命令が不合理なものでないことが必要であると考えられます。そのため、労働契約に全く明記されていない業務や、労働契約の解釈から合理的に導くことが困難である業務については、根拠のない業務命令として拒否することが可能であると考えられます。
Q2. 契約にない出張や異動を命じられた場合、それを拒否することで解雇や懲戒処分をされますか?
契約にない出張や異動に対する基本的な考え方もまた、上記の通りです。もっとも、出張の場合、契約に具体的な出張内容等が明記されていないとしても、業務の特性上、出張が当然に予定されている場合には、出張に対する黙示の合意があったものとして出張を命じられる場合もあると考えられます。
また、異動については、特に職種や勤務地を最初から限定している場合には、範囲外の職種等に配置転換をすることは明確に契約違反として無効な異動命令となると考えられます。
出張・異動等の命令を拒否した場合、会社としては、解雇や懲戒処分を行うことが考えられます。仮にこのような処分が下され、これが上記に照らして無効であると考えられる場合は、会社との交渉や裁判によって処分の撤回を求めていくことになります。
Q3. 解雇や懲戒処分が行われた場合、無効を訴えることはできますか?
解雇によって失職した場合は、解雇が無効であり、その会社の労働者の法的地位があることを確認するという形で解雇の有効性を争うことができます。また、懲戒処分によって減給等の不利益があった場合も、懲戒処分がなければ支払われたはずの賃金を未払賃金として請求することで有効性を争うことができるものと考えられます。
[協力]
アディーレ法律事務所
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