副業で起業や時短勤務で「パラレルワーク」も【世界の働き方事情・フランス】
海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、フランス人の副業事情を現地在住ライターが紹介します。
複数の仕事を掛け持ちする人が増加
フランスでは、物価上昇による経済的事情だけでなく、就業意識の変化が近年急速に進み、副業をする人は増加傾向にあります。
少し前の情報になりますが、フランス国立統計経済研究所(INSEE)の発表によりますと、2019年末で240万人がmulti-actifsと呼ばれる複数の仕事を掛け持ちしていると推定されています。この数字は就業人口の8.2%に当たります。
以前は就業契約で副業を禁止している企業も多くありましたが、現在は副業を認める企業が主流となっています。2024年度現在では、副業も当たり前になっていることから、副業する人がより増加しているのではないかといわれています。
フランス人の副業とは?
フランスでは、本業のスキルを生かした副業をする人が多くいます。例えば、プログラマーが副業でも外注でプログラミングの仕事を受注したり、教師が家庭教師をしたりします。本業で特殊なスキルを持っているので副業にも生かす例が多くあります。
また本業とはまったく関係のない分野で副業する人も少なくありません。始めやすい副業の手段としては、ベビーシッターや家庭教師、家事代行サービス等が一般的です。現在は、これらの副業だけでなく、ライターやブロガー、ネットショップの経営などインターネットを生かした副業、Airbnbなど民泊の経営のように時代を反映した副業をしている人も増えています。
兼業「パラレルワーク」が拡大
フランスでは、週5日のフルタイム契約が基本ではなく、個人の意向に合わせて週3日、週4日などの時短勤務を可能としている企業が増えてきました。週3日は本業で働き、残り2日は他の仕事をする「パラレルワーク」という働き方が若者を中心に広がりつつあります。
例えば、週4日は本業の会社で働き、残りの1日は自分の興味のある分野のアソシエーションで働いたり、企業ではハーフタイムで働き、同時に昔から好きだったアンティークのオンライン販売業をするといった感じで、柔軟に兼業をする人が増えてきているという印象です。
以前は会社勤めをする際に、子育てを理由とした時短勤務以外は、フルタイム勤務が基本でした。現在は、勤務時間を交渉できる企業も多くあるので、企業で働きながらも、兼業で自分が本当に興味のある分野で働く人が増加しているのです。
また、副業で起業し、いずれは本業にしていきたいと考え行動を起こす人が増えてきています。以前は日本のようにフランスも定年退職まで会社勤めをすることが一般的でしたが、現在は必ずしも定年退職まで企業に勤めるのではなく、副業でうまくいけば、それをいずれは本業にしていきたいと考える人も珍しくないのです。
フランスでは、年々副業が認められ、以前より豊かな就業スタイルが実現されているように感じられます。副業が、新しい働き方を生み出す要因のひとつになっているようです。
[参考]
Pluriactivité − Emploi, chômage, revenus du travail | Insee
[文/北川菜々子]
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。