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「部下と向き合えない」忙しすぎる日本型マネジメントの問題点

学び

優秀なプレイヤーのがんばりには限度がある

人事

 組織全体の成果からすれば、こう考えることもできます。たとえば、一般的な人が上げられる成果を「10」だとしましょう。もし、管理職になった人がとても優秀なプレイヤーで、1人で「50」の成果を出せるとします。

 その人に部下が5人いれば、それぞれの出す「10」の成果と、上司自身の「50」を足して、チームとしては「100」の成果になります。一方、上司は自らが売上を立てるのではなく、マネジメントに全力を尽くし、5人の部下の力を、「10」から「25」に引き上げることができたとします。すると、上司の成果は「0」でも、チームとしての成果は「125」になります。

 つまり、上司一人が限界までがんばるよりも、「25」も成果を伸ばすことができるのです。管理職は、自身が「優秀なプレイヤー」であるよりも、部下一人ひとりのアウトプットを高めてチームの成績を効率的に上げるべきなのです

プレイヤーからマネージャーに変身したAさん

 私たちの「1on1ミーティング」のノウハウを導入して、成果が上がった事例をご紹介します。営業部門で管理職のAさん(36歳)は、営業成績がピカイチで、社内ではかなり早く昇進しました。しかし、本人が優れているがゆえに、営業成績が上がらない部下を育成することよりも、自身が前線に立ち、一件でも多く受注することを優先していました。

 そのため、部下たちの責任感や数字達成へのこだわりは薄れ、Aさん自身の時間の余裕もなくなっていきました。その結果、Aさん一人ががんばってなんとか最低限の数字を達成するような状況が続きました。Aさんは「マネジメントに時間を取られると、目先の数字が達成できなくなる」といった恐怖心が根底にあり、自分はこうした働き方をせざるを得ないと、かたくなに考えていたのです。

 しかし、組織のなかでの中長期的な自身のキャリアを考えた場合、管理職としてチームの成果を上げていく方向にシフトしなければならないこと、また一人だけがプレイヤーとしてがんばって出せる成果には限界があることを理解してもらって、プレイヤーの時間を削ってでも、マネジメントに時間を割いてもらうよう決意していただきました

 その時点からわずか1年間で部署の成果は1.6倍にも伸び、特に若手のなかにはAさんの手法や考え方を積極的に学んで、以前の倍以上の数字を叩き出す部下も現れました。個に寄り添うマネジメントの強さが、よくわかる例といえるでしょう。

<TEXT/EDGE株式会社代表取締役 佐原資寛>

EDGE株式会社 代表取締役 チーフエヴァンジェリスト。1986年生まれ、京都府宇治市出身、横浜国立大学工学部卒。2008年大学在学中よりHRテクノロジー「エアリー」事業に参画。HRテクノロジーとコンサルティングを組み合わせた人事課題解決の支援実績は200社を超える2017年4月より現職

成長する組織をつくる1on1マネジメント

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心理学的なアプローチで、部下を5つのタイプに分類 それぞれの個性に合わせた言葉がけで、必ず成果が上がる!

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