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広瀬すずが語る「何をしても涙が出てきてしまった」難しい役どころへの挑戦

暮らし

「ふわふわ」感を受け入れられた瞬間

流浪の月

(C) 2022「流浪の月」製作委員会

――広瀬さんが湖に飛び込むシーンは、新型コロナでの撮影の中断明けに追加されたそうですね。

広瀬:なにか、すっきりしました。あそこを演じたことによって、監督の言う「感じられる」ようになったのかは分かりません。でも原作も含めて、あそこは唯一自由だった場所と時間で、文と離れたいろんな感情が詰まった場所だと思うんです。

 なにより更紗はあのとき文が握ってくれた手の感触を頼りに生きてきた。私自身があそこに立ってみて「本当にここにいたのかな」と感じたり、過去の出来事が本当なのか嘘なのか分からなくなる「ふわふわ」した感じは、いくら脚本を読んでも考えきれることではなかった。そうした感情がひとつずつ生まれていくといいなと思えた瞬間でした。

昔のほうが豊かだったのでは?と葛藤も

広瀬すず

――ちなみに頭で考えてしまうことは、昔からありましたか?

広瀬:10代のときはなにも考えずにいたと思います。感覚的にすごくいろんなものを捉えていた気がしますね。20代になった今のほうが、好きなものが形として見えてきたり、視野も広くなったとは思います。

 でも今は頭で理解しようとしてしまうというか、感じるより考える時間のほうが圧倒的に多いです。ある意味、柔軟になったのかもしれないですが、10代の頃のほうが好きなままに感じていて豊かだったのが、大人になるにつれて無になっていくような。

――本作からは人の優しさだけでなく、「悪意」も伝わってきます。広瀬さん自身は、人の悪意に立ち向かう術を持っていますか?

広瀬:更紗は「誘拐された元女児」というレッテルを貼られていますが、私も職業柄、見られ方が決まっている気がします。でも私は、人からどう見られたいとか、自分を知って欲しいという願望があまりないんです。もし笑いに変えられるなら行動するかもしれないですが……(笑)。

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