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選挙モンスター・河村たかし、ついに“空気”を読み間違えた彼の失敗

ビジネス

“市民の味方”の空気を身にまとった市長

 これにより、つまりこの人が何を相手に人気を得ていたのかがわかりやすいと思います。実は“ふわっとしたものを掴む”という点に非常にスキルがあったということです

 河村市長は、今回の選挙でたくさん公約をあげています。東京スカイツリーに対抗する1000メートルタワー建設計画、名古屋城天守閣の木造復元計画、熱田神宮周辺の観光地化、街でのSL蒸気走行計画など、空気がパーッと華やかになる景気のいい公約を掲げますが、ほぼ実現されていません。

 コロナ関連では、電子マネー利用で買い物額の30%分をキャッシュバックするというポイント還元企画を宣言していましたが、実際にどうやるかに関しては不明瞭なままです。でもそれは問題ではないのです。

 そういった景気のいいことを言って、その場の空気をなんとなく賑やかにして、その空気を支配していく。こういう手腕をずっと使ってきた人なわけです。常に自分は庶民派であり、叩き上げであり、そして市民の味方であるという空気を身にまとって、ずっと選挙を戦ってきた人です。

「表現の不自由展」での憲法無視スタンス

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 今回のリコール不正は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の展示内容(昭和天皇を含むコラージュの自作が燃える映像作品や、慰安婦を表現した少女像など)への批判に端を発しています。

 非常に大きな騒ぎになりましたが、ここで河村市長が「あ、この空気を身にまとえばいいんだ、この空気を味方につければいいんだ」と選択した空気というのが、非常に偏ったものです。僕は“右的”とはあえて言いませんが、正当なる保守や右翼的なものとは違う、排外主義的・差別的空気こそが、市民の空気であるという読み間違えをして、そこに突っ込んでいくことになります

 ちなみに「あいちトリエンナーレ2019」がスタートしたときは、河村市長も式典に出席してプロ野球中日の球団応援歌「燃えよドラゴンズ」を歌ってご機嫌だったわけですが。つまり、本人は中身をまったくチェックしていないし、見てもいなかったということが、この後の展開でわかります。

 なぜなら、大事なのは空気だけだからです。何かでっかい芸術祭が名古屋で行われている空気に乗っかって「よっしゃ!」と応援歌を歌いましたが、空気が一変して怒っている人たちが出てきた。そして、今度はその空気に乗っかってしまったわけですね。

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