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民泊で一人勝ち「Airbnb」は新法でどうなる?物件激減、新たなライバルも…

暮らし

 世界191か国、8万1000都市で500万以上の宿泊情報を提供し、宿のホストとゲストを仲介するAirbnb(エアビーアンドビー)。日本でも2014年進出以来、民泊の代名詞として急成長を遂げました。

古民家 民泊

※画像はイメージです(以下同じ)

 今年6月の住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)施行に伴い、未認可物件の削除と予約の強制キャンセルといった対応が賛否両論を呼び、良くも悪くもさらにその知名度は上がっています。

Airbnbと日本の民泊ビジネスの推移

 Airbnbは民泊新法を受け、民泊関連事業を手掛ける日本企業36社との協業組織「エアビーアンドビー・パートナーズ」を設立。

 ファミマ(鍵の受け渡し)、セコム(物件のセキュリティ)、損保ジャパン日本興亜(ホスト向け保険)、ビッグカメラ(ホスト向け家電販売)、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(Tポイント連携)などとの協力体制のもと、日本独自の産業横断型組織による総合旅行サイトへのシフトを掲げます。

 シェアエコノミー推進と法令遵守の両立に取り組むAirbnbですが、その成果やいかに? 株式会社ヴァリューズから直近2年間のネット上の国内ユーザー行動ログを提供してもらい、Airbnbの利用実態に迫ります。

Airbnb

図表 1:Airbnb(https://www.airbnb.jp/)の国内年代別ユーザー数推移と主なできごと

 直近2年間のユーザー数を年代別に見てみると、民泊新法施行を受け7月にいったん利用が減ったあとは、意外なことに(?)月間ユーザー数が増加傾向。特に20代の利用は衰えていないようです。

 逆に60才以上は、2016年10-12月のピークから減少傾向が続き、特に新法施行以後は存在感が薄まっています。一時は「賃貸よりも投資効果が高い」と注目された民泊ビジネスでしたが、住宅宿泊届出で参入ハードルが上がり、シニア富裕層の関心が薄れたのでしょうか。

そもそも民泊新法って?

 Airbnbの日本進出は、年間訪日外国人が約1340万人だった2014年。翌2015年には1970万人、2016年2400万人、2017年には2870万人と急増し、政府は2020年までに訪日外国人4000万人の目標を掲げます。

 都市圏では外資系ホテルの進出も相次ぎましたが、訪日外国人の増加スピードほどではありません。これを吸収してきたのが民泊で、規制が追いつかないまま住民トラブルも伴いながら急増。観光庁の調査によると訪日外国人の15%が利用しています。

Airbnb

図表 2: 日本の宿泊施設数(厚生労働省「衛生行政報告例」より筆者作成)

 民泊新法は、民泊物件に一定の基準に基づくお墨付きを与えてマナー違反などの住民トラブルを回避するため、「違法」の定義を明文化して問題物件を一掃。いわば市場をリセットしたうえ、合法的かつ安全なシェアエコノミーによる宿泊施設不足問題のソリューションを目指し制定されました。

 ところが、大量の書類提出を伴う自治体の営業許可取得義務化、そして何より年間営業日数180日の上限が設けられたことから、民泊ホストにとっての魅力が一気にダウン。住居地域での民泊営業を週末に限定するなど民泊新法よりも厳しい条例を制定する地域、まるごと民泊禁止規約を設けるマンションなどが続出し、より投資対効果が読めなくなりました。

 3月時点で6万件だった国内Airbnbホスト数は6月に8割激減し、「民泊」に必要な住宅宿泊事業の届出の提出は9月時点で9607件、うち受理済みは8199件にとどまります。6月の各3728件、受理済み2210件からは増えましたが、「一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図る」民泊新法の思惑通りには進んでいないのです。

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