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SNS副業詐欺の手口は50年前から同じ!「苦情の50年史」に学ぶ悪質広告の共通点

ビジネス

「気軽に稼げる」と訴える副業の募集をSNS上で見付けて申し込み、トラブルに遭う人が急増しています。

ただ、この手の詐欺広告は、言葉が今っぽいだけで、インターネットが登場する前から、ずっと変わらない手法で繰り返されていると、過去の広告トラブル事例を見るとわかります。

そこで今回は、不正な広告をなくし、真実を伝える広告を育てる公益社団法人JARO(日本国国審査機構)の「苦情の50年史」の中に、現代の詐欺的副業と手口が共通するトラブル事例を探して紹介します。

人の心を誘惑し、お金を引き出す「鉄板」の手法

消費者トラブルの解決を目的とした独立行政法人の国民生活センターによると、「簡単なタスクで稼げる」と訴える副業案件でトラブルに遭う人が過去5年で、右肩上がりに増えているとわかります。

同センターに寄せられる相談は件数のみならず、被害金額も右肩上がりに増えているのです。SNSで見た広告でトラブルに遭ったという相談数も一貫して増加しています。

要するに、SNS上で目にした副業の誘いに手を出してトラブルに遭うケースが年々増えているのですね。

具体的には「いいね」を押すだけ、スタンプを送るだけ、動画のスクリーンショットを撮るだけ、チャットで相談にのるだけ、レンタル彼女・彼氏に応募するだけで、すき間時間にお小遣いを稼げるといった「おいしい」副業求人が挙げられます。

海外事業者に暗号資産で投資するといった架空の投資勧誘も同様です。

それらの募集・勧誘に応募してみると、いざ業務を始めようと思ったら、何らかの購入、登録、受講、および(または)振り込みが要求される手口です。

SNSの「いいね」だとか、チャット機能だとか、動画のスクリーンショットだとか、レンタル彼氏だとか、暗号資産だとか、キーワード自体はものすごく今っぽく感じます。

しかし、目に留まるキーワードが新しく変わっているだけで、人の心を誘惑し、お金を引き出す「鉄板」の手法は50年前から変わらないと、過去の広告トラブル事例を見るとわかります。

SNS副業のトラブルと仕組みは一緒

「真実を伝える広告を育てる」といった理念の下に誕生した公益社団法人にJARO(日本広告審査機構)という組織があります。その設立50周年を記念して、各種広告に対する過去の苦情をまとめた「苦情の50年史」を同機構が公開しています。

具体的には、1974年度にスタートし、2023年度に至るまでに受け付けた苦情(約26万件)を集計し、さまざまな角度から分析したコンテンツです。

その中には、求人・内職の広告に対する苦情も多く、実際の事例を見ると、SNSの副業広告に手を出した現代人がトラブルに遭うケースと構造がまったく同じだとわかります。

例えば、1980年代の内職の求人広告、人材募集の求人広告に、次のような苦情が寄せられています。

“「自宅で出来る5万円・当会からお渡しする広告での簡単なPR業務」というチラシを見て電話したところ担当者がやってきて「“奥さまに最適なアルバイトの会”に入会して20万円の羽毛布団を買わなければならない」と言われた”

“”全国の主婦・OLの人気独占! 楽しく作って月収5~20万円以上!”というアクセサリー製作スタッフ募集のダイレクトメールが送られてきた。本当にこんな収入があるのだろうか。指導費が4万3千円かかるというのも気になる”

“タレント・歌手募集の広告に応募した。登録料5万円を払いテレビCMにその他大勢で出演したがギャラを払ってくれない”

“新聞で軽自動車運送業務募集の広告を見て説明会に行った。「広告には仕事を保証する」「月収40万~60万」などと表示されていた。自動車の購入以外に登録料など手数料が必要と言われた”

“4万円を支払い通信講座を受けた後、民芸品などをつくる内職ができて高収入が得られると広告にある。信用できるのだろうか”

(全て「苦情の50年史より引用」)

気軽に稼げる、大金を稼げる、人材を募集すると訴えながら、実際に始めるためには、何かしらの登録、購入、受講、および(または)振り込みが必要になるといった勧誘手法です。

これらの仕組みは、現代のSNS副業のトラブルと根本的に一緒ですよね。

“怪しい副業・アルバイトでは、「報酬を得るために必要」などと言われ、登録料やサイト利用料等さまざまな名目でお金を支払わされるという特徴があります”(国民生活センターのホームページより引用)

入り口を低くして、一歩踏み込ませ、その先に行くためには、何らかの形で金銭の支払いが必要になるといった手法の広告は、1990年代にも2000年代にも、JAROの「苦情の50年史」に繰り返し登場します。

場合によっては、その先が「闇バイト」につながっていて、脅されて抜け出せなくなり、犯罪者になってしまうケースもあると警視庁も注意喚起を促しています。

キラキラした文面ではなく、悪質広告の仕組みそのものを学ぶためにも「苦情の50年史」のような過去の事例を役立てたいです。

[文/坂本正敬]

[参考]
苦情の50年史 – JARO

【若者向け注意喚起シリーズ<No.5>】怪しい副業・アルバイトのトラブル-簡単に稼げて高収入?!うまい話には裏がある…- – 国民生活センター

儲け話に関するトラブルにご注意! – 国民生活センター

スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!-簡単なタスクを行う副業でお金を払う??詐欺に騙されないで- – 国民生活センター

「消費生活センターにおける解決困難事例の研究~起業・副業をめぐる消費者トラブルの被害救済を中心に~」調査報告書 – 国民生活センター

簡単な作業をするだけで「誰でも1日当たり数万円を稼ぐことができる」などの勧誘により「副業」の「マニュアル」を消費者に購入させた事業者に関する注意喚起 – 消費者庁

※ #BAN 闇バイト – 警視庁

〈bizSPA!フレッシュ〉元編集長。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉創刊編集長。執筆者としては、国内外の媒体に日本語と英語で寄稿。翻訳家としては訳書もある。技能五輪国際大会における日本代表選手の通訳を直近では務める。プライベートでは、PTA広報誌の編集長も兼務しており、広報誌の全国大会では受賞経験もあり。

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