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土方歳三が敵の刀をバク転で回避?司馬遼太郎の名作コミカライズの“遊び心”とは

暮らし

司馬作品の持つ“起源”を大切に

燃えよ剣

©奏ヨシキ、小松エメル、新潮社

――メインのキャラクターは、やっぱり原作のイメージに沿って描かれている?

奏:そうですね。たとえば沖田総司は中性的で、浮世離れした天使みたいな美少年として描いています。実際の肖像画を見るとそんなことはないんですけど(笑)。『燃えよ剣』自体が男性ばっかり出てくる作品なので、沖田を女性っぽくするのは絵的にもバランスがいいんじゃないかと思いますね。

 司馬遼太郎作品って一時期、大ブームになってたくさんの人に読まれたので、まるでそれが史実かのように受け止められているんです。土方が「鬼の副長」、沖田は「飄々とした美少年」みたいなイメージの起源になっているのは、司馬先生の作品だと思うので、そこは大事にしています。

小さい頃に『燃えよ剣』を読まされた

――奏さん自身は、司馬作品を読んだことはありましたか?

奏:兄貴が新選組のファンで、小さい頃に『燃えよ剣』を読まされた記憶があります。でも、子どもには良さが分からずにすぐにやめちゃったんです。このお仕事をいただいてから、ちゃんと読んでみたら面白くて。昔は嫌なヤツだと思っていた土方のことも、大人になった今は「時代に逆らって生きる頑なさ」みたいなところが、かっこいいんだと分かるようになりました。

<取材・文/Marino>

【秦ヨシキ】
漫画家。「週刊ヤングマガジン」にて連載された『首を斬らねば分かるまい』(原作:門馬司)、WEB発の人気小説をコミカライズした『経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 ~勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ~』(原作:徳川レモン、キャラクター原案:riritto)の作画を担当

燃えよ剣 1

燃えよ剣 1

時は安政四年。後に「新選組 鬼の副長」と呼ばれる土方歳三は、喧嘩に明け暮れる日々を過ごしていた。農民の生まれである歳三は武士への強い憧れがあった。しかし、身分という壁に抗えず、ただ憧れだけが募る鬱屈とした日々を過ごしていた

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