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スシロー「1皿100円」終了へ。38年間値上げせずにすんだワケ

ビジネス

くら寿司は固定費が大きく、変動費が小さい

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「中とろ」「2倍えび天手巻き」ともに100円(税抜 2022年4月フェア時点) くら寿司プレスリリースより

 しかし、固定費は余裕がありません。くら寿司の固定費率(売上高に占める固定費の比率)は約52%と、スシローの約46%に比べ高くなっています

「固定費」は、売上があろうとなかろうと発生する費用です。仮に、固定費がゼロなら、売上がなくても赤字にはなりません。しかし、固定費があると、固定費分まるまる赤字になります。固定費が大きい企業ほど、売上減少のダメージが大きい。

 くら寿司は固定費が大きく変動費が小さい、ハイリスク・ハイリターン。スシローは固定費が小さく変動費が大きい、ローリスク・ローリターンのビジネス、と言えます。「くら寿司のほうがリスクが高い」。これが、値上げをしない理由のふたつ目です。リスクの違いが、値上げに対する意思決定を異なるものにさせています。では、なぜ、くら寿司のほうが固定費率が高いのか。固定費の内訳を考えます。

高い固定比率の要因は「危機意識」

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「抗菌寿司カバー鮮度くん」くら寿司プレスリリース(「抗菌寿司カバー鮮度くん」誕生10周年記念キャンペーン第2弾)より

 くら寿司とスシローの大きな違い。それは、「フタ(寿司カバー)」です。くら寿司のレーンを流れる寿司は「フタ」されています。

 このフタ「鮮度くん」は、開発に20年を要し、米国で特許を取得した、くら寿司の「自信作」です。国内では10年前から導入しています。開発した動機は、高い危機意識でした。コロナ禍では「鮮度くん」自体を殺菌する紫外線殺菌システムを導入。さらに危機意識を高めています。

 くら寿司社長の田中邦彦氏はこう述べます。

「生ものを裸で回すことに衛生上の問題があることなんて昔から分かっていた」(くら寿司・田中社長、危機への備えが試されている|日経ビジネス電子版)

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