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高齢者の外出機会が増えた!「日本一歩かない県」に起きた“奇跡”

ビジネス

UDタクシー導入で国土交通大臣表彰を受賞

扶桑社

木田 悟史『みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント』(扶桑社新書)

 UDタクシーの説明が少し長くなりましたが、既述した通り「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」では、一般社団法人「鳥取県ハイヤータクシー協会」への助成事業として、このUDタクシーを2016年から準備し、2017年9月までに125台、2018年1月に75台、合計200台を導入しました

 タクシーの数が5万台と言われる東京では200台ではほとんど影響がでませんが、鳥取県内なら小型タクシー半分以上をUDタクシーにできます。そのことでいろいろなことが変わる、変えられるのではないかと期待してのことでした。その成果として「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」を受賞しています。

 ちなみにタクシーの車体カラーは一般にはタクシー運営会社ごとに違っているのですが、UDタクシーの車体はすべて黄色に統一していただきました。この黄色は鳥取(山陰地方)はどんより曇った日が多いなか、明るい黄色で元気になってもらおうという想いと、ひと目でUDタクシーだと認知してもらうためです。

 JR鳥取駅や米子駅などにはじめて降り立ってタクシー乗り場に向かうと「UD TAXI」と大きくペイントされた「黄色」のインパクトに驚かれるかもしれません!

高齢免許返納者のタクシー利用が倍増

 ではUDタクシー導入で具体的に何が変わったのでしょうか。はっきりと数字に出ているのは、高齢者のタクシー利用が増えたことです。鳥取県では運転免許証を返納した高齢者ドライバーのUDタクシー利用者が急増。免許を返納した高齢者のタクシー利用はUDタクシー導入前の2015年が8381件だったのが、導入後の2016年には1万7111件、2017年は1万9845件と、導入前と導入後では約2.4倍も違っています

 全国的に高齢者の運転が引き起こす事故が多発しています。「自分では大丈夫だと思っているかもしれないけれど、何が起こるかわからない。危ないからもう免許証を返納して!」と子供や孫が強く勧めても、頑なに拒否する方もいますが、それは外出するときの足として車が手放せないという理由も少なからずあるでしょう。しかし、UDタクシーがそれに代わるようになり、結果、不幸な事故予防にもつながっているはずです。

 そしてじつはUDタクシーは意外にも健康づくりにも貢献しています。健康のためには歩くことが大事です。歩かないことで足腰が弱まる、病気を呼び込む、引いては医療費の拡大にもつながります。

 都会であれば目的地まで電車や地下鉄、バスを利用し降りた駅や停留所からは歩いて向かうというのが一般的ですが、地方では公共交通機関が少なく、目的地まで直接クルマで向かうことが当たり前になっていて、徒歩5分、10分の距離でもついクルマに乗ってしまいます。歩かずクルマに乗ることがクセになっているのでしょう。

みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント

みんなでつくる“暮らし日本一”「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント

キーワードは「濃いつながり」「おせっかい人材」「学びの場」!“暮らし日本一”をコンセプトに推進されたプロジェクトでは何を拓き、何を成し遂げ、何を学んだのか?6年間にわたるその全貌は多種多様なヒントに溢れている

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